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FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 57》
- 2025/11/10 (Mon) |
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《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (死生観~ルシスの禁忌)】
《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (死生観~ルシスの禁忌)】
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【『ルシスの禁忌』とは (死生観~ルシスの禁忌)】
月明かりが照らす窓辺に佇むソムヌスの視線の先には、寝台の横に設えられたチェスト・・・に仕舞い込んだ、彫り込まれた細工が美しい小箱。
それは二人が旅立つ前夜、アーデンとエイラから託された物で。
その中には、二人がそれぞれ身に付けていた「指輪」と「首飾り」が収められていた。
『ソムヌス・・・これは王剣の一族としてではなく。
兄姉として、弟の貴方にお願いしたいの。』
『だから、これは私達だけの秘密。
私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて。』
それらを託された、あの日のエイラの言葉が頭を過る。
二人と交わした最後の約束は『私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて』。
とは言え・・・この様な事態となった今。預かった「光輝く指輪」と「水晶の首飾り」の存在を、皆に伝えるべきだとは分かっていた。
エイラ自身「今回、指輪と首飾りを貴方に預けて行くのは、戻れない事を危惧してでは無いの」と言っていたのだから。
それが果たされなくなった以上、三種の神器「玉座・指輪・首飾り」の三つは、同じ場に揃って然るべきだろう。
それでもソムヌスは、自分の手元に「指輪」と「首飾り」がある事を・・・残されていた「王の玉座」を加え、実は「指輪と首飾りは二人と共に失われたのではなく、三種の神器は此処に揃っている」と公表するのに躊躇いがあった。
勿論、そんな大事な事を黙っていたのを叱られる・・・なんて理由では無く。
それを明らかにするのは「私達が戻るまで、どうか守り抜いてほしい」という、二人と交わした最後の約束を諦め破るという事で・・・その理由が「もう戻らないのだから」とするのなら、それは二人の「完全な死」を認めた事になってしまう。
でも、それだけは・・・それだけは認めたくなかった。
ソルハイムの死生観として、人が世界が「想い出・記憶」を失わない限り、例え肉体(器)は失われても、魂が失われる事は無く。
人が世界が「想い出・記憶」を失わない限り、その時代・世界に相応しい新たな肉体(器)が与えられ、それに魂が宿される事で復活を果たす・・・とされている。
つまりソムヌスも、今世のアーデンとエイラの死は認めざるを得なかった。
それでも、人が世界が二人の「想い出・記憶」を失わない限り、その時代・世界に相応しい新たな肉体(器)が与えられ。
新たな「アーデン」「エイラ」として用意された肉体(器)に、一時の休息を経た二人の魂が宿される事で、何時かの時代、何時かの世界にて復活を果たすのだと・・・信じていたから、信じたかったから。
ソムヌスにとって「もう戻らないのだから」と、二人との約束を諦め破る事は。
今世だけではない・・・未来永劫二人の復活など在り得ないと「もう戻らないのだから」と諦めるに等しくて。
どうしても、どうしても・・・。
何時かの時代、何時かの世界にて復活を果たした二人に、この「指輪」と「首飾り」を返す日が来る事を信じ続ける為に、二人との最後の約束を守りたかった。
『ソムヌス・・・これは王剣の一族としてではなく。
兄姉として、弟の貴方にお願いしたいの。』
『だから、これは私達だけの秘密。
私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて。』
再び巡り合えた二人に、この「指輪」と「首飾り」を返す日まで。
自分が守り続けたかった・・・その様な事は無理だと分かっていても、どうしても諦めたくなかった。自分で「諦める」という選択を、道を選びたくなかった。
だから結局、誰にも告げる事も無く。
二人から預かった「指輪」と「首飾り」は、ソムヌスの部屋のチェストの引き出しに仕舞い込まれている。
あるべき物を、あるべき場所へ・・・あるかもしれない、いつかどこかの世界の為にも。
その教えに背く事が、後世にどれだけの影響を与えるかも分からずに。
いや、分かっていながら・・・それでも「二人に返す日」を夢見ていたかった。
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その様な経緯もあり、彼らの元には三種の神器のうち「王の玉座のみが残った」形となった。
が、その唯一残った「王の玉座」をどうするかが問題となっていた。
と言うのも、王剣の一族の者達にすれば「王の玉座」は「ソルハイムの歴史と誇り」そのものなので・・・玉座だけでもソルハイム王国に戻すのが筋だと主張した。
しかし件の男は、その思想・主張を認めた上で、玉座の返却を退けた。何故なら、
「この島に集う者達がソムヌス様を王と信じた理由は、
その玉座に座していたのがソムヌス様だったからです。
つまりソムヌス様から玉座を奪ってしまえば、
その正統性が大きく損なわれる。」
「ソムヌス様がこの国の王である為には、
その象徴たる玉座が必要不可欠なのです。」
正統性とは随分と滑稽な話だったが・・・彼らの「思い違い」に付き合うなら、そういう事なのだろう。玉座に座り運ばれていたからソムヌスが王だと思っていたのに、その象徴たる玉座を失えば・・・取り残された十と少しの少年に、一体どんな価値が見出せる?
勝手な言い分ではあったけれど、男が言う事は尤もだと納得出来た。担ぎ上げられた挙句に神輿から降ろされた・・・玉座を失ったソムヌスでは、人々の心を掌握し続ける事は出来ないだろう。
しかしその言い分に納得出来ても、ソムヌスが気の毒だとは思っても・・・ソルハイムから遠路遥々、石の玉座を担ぎ運んで来た王剣の一族の者達にとって、それは耐えがたい事だった。
新たなソルハイムの土地に据える為、負担を強いたくないと渋る主を説得し、望んで重い玉座を担ぎ、ここまで運んで来た仕打ちが、他国の王の象徴だなど・・・自分達は何の為にここまで「ソルハイムの歴史と誇り」を運んで来たのだ、と。
それでも・・・現実的な問題として、玉座をソルハイムに返却する術が無いのも事実だった。王剣の一族の者達が「この島に残る」と決めた以上、此処にはソルハイムまでの道のりを託せる人間が居ない。移住計画の為に用意していた船で運ぶにしても、それこそ船が転覆でもして玉座が海に沈んでしまえば回収不能・・・その可能性が万に一つだとしても決断出来ない。今となっては、たった一つ残された神器なのだから。
それに見込みが薄くなったとは言え、ソルハイム本国からの移住計画が白紙に戻った訳では無い。彼らがソムヌスが新たな国の王と認めた上でこの島にやって来るのなら、無人の土地となったソルハイムに玉座を戻す必要は無く。この地に残しておいた方が、この島にやって来たソルハイムの民らの心の支えにもなるだろう。例え新しい国となり王が代わっても、その根本にはソルハイムの歴史があるのだと・・・玉座を見る度に、そう思えるだろうから。
勿論、そんなのは自分を無理やり納得させているだけで、不本意である事には変わらない。それこそ「こんな事になるなら・・・」と、何度悔やんだか分からないが、
「・・・今の状況では、仕方が無いだろう。
しかし、あくまでも「預けている」に過ぎない。
ソルハイムの民らが持ち帰りたいと望むなら、
その時は彼らに・・・玉座は返してやってくれ。」
本当なら、指輪と首飾りも彼らの元に返してやりたかった・・・だからせめて現存する玉座だけでもと、願わずにはいられない。
「承知いたしました。
そう、心に留めておきましょう。
・・・ではソムヌス様。
三種の神器に関しては、以上で宜しいでしょうか?」
「・・・はい。
それが国の為、民らの為の最善であるなら・・・。」
時間にすれば、ほんの数秒だったかもしれない・・・けど。
そのほんの数秒を待っても、ソムヌスから続きの言葉が無かった事で、
「・・・そうですか。
ソムヌス様が・・・王がそう仰るのであれば。」
私からは何も・・・伏目がちに呟かれた言葉は、隣りに立つソムヌスにしか聞こえなかった。
が、その聞き逃してもおかしくない小さな呟きが、ソムヌスには心底恐ろしく響いた。
彼は「玉座に関しては」ではなく「三種の神器に関しては」と言った。
もしかしたら、彼は旅立つ二人が指輪と首飾りを身に付けていなかった事に気付いていて。
自分が指輪と首飾りを預かっているのでは・・・と、察しが付いていて。
その上で・・・自分がその事を皆に告げるかどうか。
そのほんの数秒で、此方の動向を窺っていたのではないか、と。
だが裏事情を知らず、彼の言葉も聞こえなかった他の人間達は、ソムヌスの言葉をどこか頼りなく感じながらも「三種の神器に関して」は一端の結論を得たと考えた。
こうして王剣の一族の者達にとって一番の問題であった「玉座に関して」が決着し。
話は次の議題へと移る・・・それは王剣の一族の者達にとってではない。この地にこの国に生きる、全ての者達にとって大事で大切な問題。
「それではソムヌス様。
新たな国の名は、何と致しますか?」
生まれた国に名を付ける。
生まれた子に名を付けるように、この国の成長と幸せと未来を祈って。
「新たな国の名は・・・ルシス王国、と。」
その名に王剣の一族の者達は目を見開き、言葉を飲み込むよう奥歯を噛みしめ、堪え切れなかった想いと共に嗚咽を漏らした。その様子に、
「・・・どの様な意味の言葉か、由来を伺っても?」
王剣の一族の者達にとっては、何か深い思い入れがあるのだろうけれど・・・。
「いえ・・・それは言えません。
でも意味を知る者にとっては、
忘れる筈もない・・・とても大切で尊い名です。」
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この国は「新生ソルハイム王国」となる筈で。
だから王となるのは「ソルハイムの王・アーデン」である「ルシス・チェラム」という男の筈だった。
でもこうして彼は、国にとって都合の悪い事実と共に闇に葬られ封じられ。
この国の初代王となったのは・・・後の世界では「ソムヌス・ルシス・チェラム」と呼ばれる、幼い少年王。
その彼が王としての最初の務め・・・新たな国名と定めたのは「ルシス王国」。
その「ルシス」という言葉は、東の大陸の者達には馴染みの無い言葉だったけれど。
それは呼ばなくなって久しくとも、ソルハイムの民なら忘れる筈が無い・・・初代王となる筈だった男の「真の名」で。
そこには「ルシス王国・初代国王」となったソムヌスからの「この国の真の王は、ルシスである」と言う・・・彼を敬い慕い愛したソルハイムの民らへの想いが込められていた。
これが後世「ルシスの禁忌」として、歴史から葬り去られ
イオスの世界の「思い出・記憶」から失われてしまった
「ルシス王国」建国に纏わる歴史と
初代王となる筈だった「ルシス・チェラム」という男の物語・・・
【『ルシスの禁忌』とは (死生観~ルシスの禁忌)】
月明かりが照らす窓辺に佇むソムヌスの視線の先には、寝台の横に設えられたチェスト・・・に仕舞い込んだ、彫り込まれた細工が美しい小箱。
それは二人が旅立つ前夜、アーデンとエイラから託された物で。
その中には、二人がそれぞれ身に付けていた「指輪」と「首飾り」が収められていた。
『ソムヌス・・・これは王剣の一族としてではなく。
兄姉として、弟の貴方にお願いしたいの。』
『だから、これは私達だけの秘密。
私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて。』
それらを託された、あの日のエイラの言葉が頭を過る。
二人と交わした最後の約束は『私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて』。
とは言え・・・この様な事態となった今。預かった「光輝く指輪」と「水晶の首飾り」の存在を、皆に伝えるべきだとは分かっていた。
エイラ自身「今回、指輪と首飾りを貴方に預けて行くのは、戻れない事を危惧してでは無いの」と言っていたのだから。
それが果たされなくなった以上、三種の神器「玉座・指輪・首飾り」の三つは、同じ場に揃って然るべきだろう。
それでもソムヌスは、自分の手元に「指輪」と「首飾り」がある事を・・・残されていた「王の玉座」を加え、実は「指輪と首飾りは二人と共に失われたのではなく、三種の神器は此処に揃っている」と公表するのに躊躇いがあった。
勿論、そんな大事な事を黙っていたのを叱られる・・・なんて理由では無く。
それを明らかにするのは「私達が戻るまで、どうか守り抜いてほしい」という、二人と交わした最後の約束を諦め破るという事で・・・その理由が「もう戻らないのだから」とするのなら、それは二人の「完全な死」を認めた事になってしまう。
でも、それだけは・・・それだけは認めたくなかった。
ソルハイムの死生観として、人が世界が「想い出・記憶」を失わない限り、例え肉体(器)は失われても、魂が失われる事は無く。
人が世界が「想い出・記憶」を失わない限り、その時代・世界に相応しい新たな肉体(器)が与えられ、それに魂が宿される事で復活を果たす・・・とされている。
つまりソムヌスも、今世のアーデンとエイラの死は認めざるを得なかった。
それでも、人が世界が二人の「想い出・記憶」を失わない限り、その時代・世界に相応しい新たな肉体(器)が与えられ。
新たな「アーデン」「エイラ」として用意された肉体(器)に、一時の休息を経た二人の魂が宿される事で、何時かの時代、何時かの世界にて復活を果たすのだと・・・信じていたから、信じたかったから。
ソムヌスにとって「もう戻らないのだから」と、二人との約束を諦め破る事は。
今世だけではない・・・未来永劫二人の復活など在り得ないと「もう戻らないのだから」と諦めるに等しくて。
どうしても、どうしても・・・。
何時かの時代、何時かの世界にて復活を果たした二人に、この「指輪」と「首飾り」を返す日が来る事を信じ続ける為に、二人との最後の約束を守りたかった。
『ソムヌス・・・これは王剣の一族としてではなく。
兄姉として、弟の貴方にお願いしたいの。』
『だから、これは私達だけの秘密。
私達が戻るまで・・・どうか守り抜いて。』
再び巡り合えた二人に、この「指輪」と「首飾り」を返す日まで。
自分が守り続けたかった・・・その様な事は無理だと分かっていても、どうしても諦めたくなかった。自分で「諦める」という選択を、道を選びたくなかった。
だから結局、誰にも告げる事も無く。
二人から預かった「指輪」と「首飾り」は、ソムヌスの部屋のチェストの引き出しに仕舞い込まれている。
あるべき物を、あるべき場所へ・・・あるかもしれない、いつかどこかの世界の為にも。
その教えに背く事が、後世にどれだけの影響を与えるかも分からずに。
いや、分かっていながら・・・それでも「二人に返す日」を夢見ていたかった。
■□■□■□■□■□■□■□■□
その様な経緯もあり、彼らの元には三種の神器のうち「王の玉座のみが残った」形となった。
が、その唯一残った「王の玉座」をどうするかが問題となっていた。
と言うのも、王剣の一族の者達にすれば「王の玉座」は「ソルハイムの歴史と誇り」そのものなので・・・玉座だけでもソルハイム王国に戻すのが筋だと主張した。
しかし件の男は、その思想・主張を認めた上で、玉座の返却を退けた。何故なら、
「この島に集う者達がソムヌス様を王と信じた理由は、
その玉座に座していたのがソムヌス様だったからです。
つまりソムヌス様から玉座を奪ってしまえば、
その正統性が大きく損なわれる。」
「ソムヌス様がこの国の王である為には、
その象徴たる玉座が必要不可欠なのです。」
正統性とは随分と滑稽な話だったが・・・彼らの「思い違い」に付き合うなら、そういう事なのだろう。玉座に座り運ばれていたからソムヌスが王だと思っていたのに、その象徴たる玉座を失えば・・・取り残された十と少しの少年に、一体どんな価値が見出せる?
勝手な言い分ではあったけれど、男が言う事は尤もだと納得出来た。担ぎ上げられた挙句に神輿から降ろされた・・・玉座を失ったソムヌスでは、人々の心を掌握し続ける事は出来ないだろう。
しかしその言い分に納得出来ても、ソムヌスが気の毒だとは思っても・・・ソルハイムから遠路遥々、石の玉座を担ぎ運んで来た王剣の一族の者達にとって、それは耐えがたい事だった。
新たなソルハイムの土地に据える為、負担を強いたくないと渋る主を説得し、望んで重い玉座を担ぎ、ここまで運んで来た仕打ちが、他国の王の象徴だなど・・・自分達は何の為にここまで「ソルハイムの歴史と誇り」を運んで来たのだ、と。
それでも・・・現実的な問題として、玉座をソルハイムに返却する術が無いのも事実だった。王剣の一族の者達が「この島に残る」と決めた以上、此処にはソルハイムまでの道のりを託せる人間が居ない。移住計画の為に用意していた船で運ぶにしても、それこそ船が転覆でもして玉座が海に沈んでしまえば回収不能・・・その可能性が万に一つだとしても決断出来ない。今となっては、たった一つ残された神器なのだから。
それに見込みが薄くなったとは言え、ソルハイム本国からの移住計画が白紙に戻った訳では無い。彼らがソムヌスが新たな国の王と認めた上でこの島にやって来るのなら、無人の土地となったソルハイムに玉座を戻す必要は無く。この地に残しておいた方が、この島にやって来たソルハイムの民らの心の支えにもなるだろう。例え新しい国となり王が代わっても、その根本にはソルハイムの歴史があるのだと・・・玉座を見る度に、そう思えるだろうから。
勿論、そんなのは自分を無理やり納得させているだけで、不本意である事には変わらない。それこそ「こんな事になるなら・・・」と、何度悔やんだか分からないが、
「・・・今の状況では、仕方が無いだろう。
しかし、あくまでも「預けている」に過ぎない。
ソルハイムの民らが持ち帰りたいと望むなら、
その時は彼らに・・・玉座は返してやってくれ。」
本当なら、指輪と首飾りも彼らの元に返してやりたかった・・・だからせめて現存する玉座だけでもと、願わずにはいられない。
「承知いたしました。
そう、心に留めておきましょう。
・・・ではソムヌス様。
三種の神器に関しては、以上で宜しいでしょうか?」
「・・・はい。
それが国の為、民らの為の最善であるなら・・・。」
時間にすれば、ほんの数秒だったかもしれない・・・けど。
そのほんの数秒を待っても、ソムヌスから続きの言葉が無かった事で、
「・・・そうですか。
ソムヌス様が・・・王がそう仰るのであれば。」
私からは何も・・・伏目がちに呟かれた言葉は、隣りに立つソムヌスにしか聞こえなかった。
が、その聞き逃してもおかしくない小さな呟きが、ソムヌスには心底恐ろしく響いた。
彼は「玉座に関しては」ではなく「三種の神器に関しては」と言った。
もしかしたら、彼は旅立つ二人が指輪と首飾りを身に付けていなかった事に気付いていて。
自分が指輪と首飾りを預かっているのでは・・・と、察しが付いていて。
その上で・・・自分がその事を皆に告げるかどうか。
そのほんの数秒で、此方の動向を窺っていたのではないか、と。
だが裏事情を知らず、彼の言葉も聞こえなかった他の人間達は、ソムヌスの言葉をどこか頼りなく感じながらも「三種の神器に関して」は一端の結論を得たと考えた。
こうして王剣の一族の者達にとって一番の問題であった「玉座に関して」が決着し。
話は次の議題へと移る・・・それは王剣の一族の者達にとってではない。この地にこの国に生きる、全ての者達にとって大事で大切な問題。
「それではソムヌス様。
新たな国の名は、何と致しますか?」
生まれた国に名を付ける。
生まれた子に名を付けるように、この国の成長と幸せと未来を祈って。
「新たな国の名は・・・ルシス王国、と。」
その名に王剣の一族の者達は目を見開き、言葉を飲み込むよう奥歯を噛みしめ、堪え切れなかった想いと共に嗚咽を漏らした。その様子に、
「・・・どの様な意味の言葉か、由来を伺っても?」
王剣の一族の者達にとっては、何か深い思い入れがあるのだろうけれど・・・。
「いえ・・・それは言えません。
でも意味を知る者にとっては、
忘れる筈もない・・・とても大切で尊い名です。」
■□■□■□■□■□■□■□■□
この国は「新生ソルハイム王国」となる筈で。
だから王となるのは「ソルハイムの王・アーデン」である「ルシス・チェラム」という男の筈だった。
でもこうして彼は、国にとって都合の悪い事実と共に闇に葬られ封じられ。
この国の初代王となったのは・・・後の世界では「ソムヌス・ルシス・チェラム」と呼ばれる、幼い少年王。
その彼が王としての最初の務め・・・新たな国名と定めたのは「ルシス王国」。
その「ルシス」という言葉は、東の大陸の者達には馴染みの無い言葉だったけれど。
それは呼ばなくなって久しくとも、ソルハイムの民なら忘れる筈が無い・・・初代王となる筈だった男の「真の名」で。
そこには「ルシス王国・初代国王」となったソムヌスからの「この国の真の王は、ルシスである」と言う・・・彼を敬い慕い愛したソルハイムの民らへの想いが込められていた。
これが後世「ルシスの禁忌」として、歴史から葬り去られ
イオスの世界の「思い出・記憶」から失われてしまった
「ルシス王国」建国に纏わる歴史と
初代王となる筈だった「ルシス・チェラム」という男の物語・・・
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