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FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 55》

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《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
 【『ルシスの禁忌』とは (落日~神が眠る地)】

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【『ルシスの禁忌』とは (落日~神が眠る地)】
「自分の身体の事なら、自分が一番分かってる。
 そう思ってたんだけどなぁ・・・。」
「だから彼も言ってたでしょ?
 自分では気付けない事もある・・・って。」
 レスタルムでの、あの日の遣り取りが頭を過る。
 もし、あの時。無理やり引き摺ってでもアーデンを医者に診せていれば、この病の原因は分かったのだろうか?治療法は分かったのだろうか?
「そう言えば・・・彼らを待たせたままだね。」
 早く良くなってソルハイムに向かわないと、申し訳ないなぁ・・・そう呟くアーデンを安心させる様、エイラは膝枕したアーデンの頭を、頬を、肩を撫でながら、
「彼らには、ちゃんと言っておいたから。
 心配しなくても、大丈夫よ。」
「チョコボ達は、元気にしてるだろうか?」
「あの子達なら、
 この寒さの中でも、元気に走り回ってるわ。」
「ソムヌス達は・・・、」
 思わずクスリと・・・泣きたくなるような失笑が漏れる。この様な状況でも、他者への心配が尽きないのか?
 まだ尚、言い募るアーデンの乾いた唇に、自身の人差し指を押し当て・・・重くならないよう、呆れた様に、ワザとらしく溜め息交じりに、

「もう・・・貴方は、
 自分の体の事を、第一に考えてれば良いの。」

 ほら、今はゆっくり休んで、と。美しく穏やかな笑みを浮かべ、眠りの淵へと誘う。
 そんなエイラの言葉に表情に、何を思ったのか・・・アーデンは何も答えなかったけれど。
 そうだね・・・とでも言うように。
 彼もまた穏やかな笑みを浮かべ、彼女の言葉に従い静かに目を閉じた。 

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「アーデン様が・・・亡くなられた?」
「おい!そりゃ、どう言う事だ?!」
 告げられた内容が内容だけに思わず語気が荒くなるも、それを相棒に視線で諫められ。大きく深呼吸し、意識して気持ちを落ち着かせる。
 が・・・それでも平常心で居られる筈がない。
 此処は剣神の一族が守る聖域で、自分達が就いていなくても大丈夫だと・・・そう言っていた。だからこそ、自分達は此処で彼らの帰りを待ち続けていたというのに。一体何があったと言うのか?
「俺達は、島に戻り報告しなければならない。
 済まないが・・・詳しい話を聞かせて欲しい。」
 まさかこのような形で、本来の「伝令役」としての仕事が回って来るなんて、と。やり場のない怒りに、壁でも殴りつけてやりたい気分にでもなるが・・・さすがにそうもいかず、拳をギュッと握り締めるに止める。
 彼らに訃報を届けにやって来たのは、何時ものエイラに似た雰囲気の女性で。彼女によれば、事の経緯はこの様な話だった。

 炎神の祭壇より先の区域は、神の兄妹弟・・・時の「炎神イフリート」「氷神シヴァ」「剣神バハムート」が、神事に赴いた際にのみ使用する居住区となっていて。一般の巡礼者は勿論、剣神の一族の者でさえ普段は立ち入る事が出来ない禁足地と定められており。
 アーデンとエイラは「炎神イフリート」「氷神シヴァ」の魂を宿す者なので、今回も当然そこに滞在していたのだけれど。
「私がお二人の食事を届け、戻ろうとした時・・・、」
 この地特有の、まるで切り立った島と島を繋ぐ橋の一部が・・・調度、自分の足元が崩れ落ちてしまい、
「アーデン様は、咄嗟に私を引き上げ・・・、」
 彼女を引き上げた後、脆くなった橋が彼の重心移動に耐えられず、
「私の代わりに・・・私を助けたばかりに・・・・・・!」
 彼の足元が崩れ・・・谷底を流れる川に転落してしまったのだ、と。
 その嗚咽混じりの報告を聞き「それでは死亡を、遺体を確認した訳では無いのですね」と。自らの伝令役としての任務を忠実に熟すなら、頭に過ったソレを確認すべきだったのだろうけど。
 それを確認するのは・・・彼女に答えさせるのは、あまりに酷に思えた。
 所謂普通の山であれば転がり落ち、途中の凹凸や樹木に引っ掛かり、命を取り留める可能性もあっただろうが・・・この山は見ての通りの断崖絶壁の岩肌だ。その山頂部の橋から転落したとなれば、考えたくはないが真っ逆さま・・・とても生きていられるとは思えない。それはもう、わざわざ「遺体を確認したのか」云々、聞く必要も無いだろう。

 あれ程の方が、このような最期を・・・と。これ程までに無念な事は無いが、大体の事情は理解した。
 しかしアーデンが事故死した、と言うのなら。
「では・・・エイラ様は、今どちらに?」
 何故「どうされているのですか?」と、聞かなかったのか・・・自分でも分からない。けれど心のどこかで何となく、続く言葉が分かっていたのかもしれない。

「エイラ様は、アーデン様の後を追って・・・いかれました。」

 そんな馬鹿な、と・・・思うべきなのだろうけど。
 やはりな、と・・・思ってしまった。彼女なら、そうするだろうと。

「事情は分かった・・・辛い話を済まない。
 だが、そうとなればオレ達は一刻も早く、
 報告に戻らなければならない。」
 出発の準備に当たり、申し訳ないが大陸に戻るまでの食糧を工面してもらえないだろうか?
 そう頼んだところ。先ほどまで悲しみに暮れていた彼女は涙を拭い気丈にも、
「私も同行させて下さい。
 全て私の責任なのですから。
 私の口から説明するのが、せめてもの償いです。」
 それに・・・貴方方から説明されても、王剣の一族の皆さんは納得出来ないでしょうし。
 それは確かにそうだろう。アーデンの帰りを待つ彼らに「アーデン様は亡くなられた」など・・・彼らから疑問をぶつけられても、自分達は今聞いた以上の事を答える事は出来ないのだから。
「それは助かります。
 では準備が整い次第、出発しましょう。」
「はい、よろしくお願いします。
 それで、あの・・・皆、慌ただしくしておりますので。
 長老への挨拶は、私がしておきます。」
 きちんと礼は尽くしておきたい質だが・・・今回ばかりは有難いと思った。このような事態に、どう対応するのが相手にとって最善なのか分かりかねていたから。
 後の心配事はと言えば・・・幸い彼女は細身なので、チョコボも自分と彼女の二人乗りなら大丈夫だろう。さすがに大柄な相棒の方で二人乗りは、チョコボが気の毒なので。それはなんとか回避してやりたい。
 と・・・そこまで考えて、ふと思う。
「そう言えば・・・。
 お二人について行ったチョコボ達は?」
「・・・え?
 ・・・あの、その・・・・・・分かりません。
 ご、ごめんなさい。」
 何時も理路整然としている彼女の、どこか有耶無耶で曖昧な返答に違和感を覚えるも、
「まぁ・・・こんな一大事に、
 そこまで気も回らないだろ?
 チョコボは帰巣本能に優れてるって話だったし。
 その・・・主が居なくなった、って気付けば、
 自分達で帰って来るだろ・・・。」
 あぁ、でもオレらが船に乗った時に「もしチョコボ達が来たら、カエムの港まで送ってやってくれ」って頼んどかないとな。海、渡れないまま立ち往生じゃ、可哀そうだもんな。後はほら、レスタルムの親父さんに、アイツらの餌。持たせてやってくれって、さ。
 あれ程、アーデンに懐いていた黒チョコボが今、どうしているのか・・・心配ではあったが、何処に居るか分からない二匹を探す時間は無い。今はどうか無事帰って来て欲しいと願い、出来る限り手を回しておいてやる事位しか・・・。

 それにしても、思うのは・・・。

「まさか、こんな事になるなんてな・・・。」
「あぁ・・・実感、湧かねぇよな。」

 親しい人間の死というのは、何時だって遣り切れなく悲しく寂しいもので。
 故人を送る葬儀も、決して喜ばしい儀式では無いけれど。
 やはり、別れの儀式・・・と言うか。
 「正しい別れ方」というのは必要なのだろう。
 自分の為にも、故人の為にも・・・そして、この世界の為にも。

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「アーデン様の肩と背中の痣と、
 黒い血を吐かれた・・・その症状は、
 別の病によるものかもしれません。」
 対象となる二種の病気は、どちらもソルハイム領では確認されていない病気で。
 東の大陸では嘗て大流行したものの、今は既に克服し収束したとされている病気・・・なので。当時、既に交流が絶たれていたソルハイムには「東の大陸で恐ろしい病が蔓延し、流行地では人口の60%が犠牲になったらしい」といった噂話程度の情報しか入って来ておらず。
「東の大陸から、
 詳しい事を知る医者を呼び寄せれば、
 手の打ちようもあるかもしれませんが・・・。」
 正直、彼らの今現在の医療水準を見るに・・・当時の彼らが「治療」によって収束を勝ち取ったのかは怪しい。倫理観に乏しい時代なら、治療法も分からぬ未知の病など、感染者や疑いの者を「処分」する方が確実で手っ取り早かっただろうから。
 そう考えれば「既に感染した者を治療する方法」など存在せず。
 もし、既に感染した者を治療するつもりが無かったのなら。当然、治療方法や経過観察の資料など存在しないだろう。
 それでも・・・そうであっても。
 この百年程で発展した「現代医学」に精通している・・・ここ炎神の祭壇に「医者」として駐在している青年は、出来得る限りの情報を集め。限られた情報を元に、以下の様にまとめた。

 アーデンの「肩と背中の痣」に関しては、出血斑により全身が黒ずみ、やがて死に至る事から「黒い死を呼ぶ病」と呼ばれた病気の症状に似ているが。
 新たな「黒い血を吐く」という症状は、特徴的な「黒」という共通点から「黒い死を呼ぶ病」の症状の一つとも考えられる反面。
 情報として伝わって来た時期が異なる事。
 また「黒い血を吐く」という症状が上げられている病気が別に存在する事から、そちらの病によるものかもしれない・・・と言う事だった、が。
 そう考えを述べた上で、こうも補足した。
 この二種の病気は「原因となる虫」を取り込んでしまってから、実際に症状が出るまでが2~7日と3~6日。もしもアーデンが東の大陸でその虫を取り込んでしまっていたとしたら、もっと早くに重篤化している筈で。
「憶測でしかありませんが。
 今言う二種の病気と似た症状を持つ、全く別の病気か。
 若しくは二種の病気が、
 変異した病気という可能性も有るか、と。」
 可能性という言葉に縋るしかないが・・・どうか、そうであって欲しいと願う。
 東の大陸での大流行より長い年月が経ち、毒性が弱まる事で症状も軽くなっているのだと。

 でなければ・・・、

「・・・さっき貴方は、
 出血斑により全身が黒ずみ、
 やがて死に至る・・・と、言ったけれど。
 その場合、どれ位の時間が残されているの?」

「それは・・・多くの場合、
 黒い死を呼ぶ病なら、二日から三日。
 もう一つの病気なら、七日から十日・・・と。」

 後数日で、どうすれば・・・何が出来ると言うのか・・・!?

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「それでは・・・アーデン様の治療を、諦める、と?」
「えぇ・・・あの人はもう、十分務めを果たしたわ。
 だから穏やかな最期を迎えさせてあげたいの。」
 眠るような、穏やかな死を。
 そう言えば・・・極寒の地での凍死は苦痛を伴わないと言うが、本当だろうか?
「しかし!
 まだ・・・間に合うかもしれません。
 最後まで、諦めなければ・・・!」
「でも!
 それで良くならなければ・・・?
 最期の最後まで無理を強いて・・・それでも・・・・・・、」
「・・・エイラ様。」
「それに・・・仮に病気を克服したとしても。
 島に戻ったところで、彼らはアーデンを認めはしない。
 それでもアーデンは、ソルハイムの民の為なら・・・と。」
 きっと彼は全てを捧げ尽くすのだろう・・・死地から戻り、永らえた命でさえ惜しむ事なく。
「でも私はもう、
 そんなアーデンを見ていたくないの・・・!」
 炎神イフリートが悪神へと堕とされたように・・・誰よりも尊いあの人が、誤解され利用され堕とされるなんて。理解される事も無く「想い出・記憶」を捻じ曲げられ、偽りの物語の「悪者」として語り継がれるなんて・・・そんな事になる位なら。
「だから、お願い。
 貴女にしか頼めないの・・・。」
 酷な事だとは分かっているが、この様な事、他の誰にも頼めない。

「彼らに『アーデンは死んだ』と。
 そして『私は、アーデンの後を追っていった』と。
 ・・・そう、伝えて。」

 彼女だからこそ・・・だ。
 それに彼女だからこそ、打ち明けなければならない・・・自分が選び取った「罪」を。
 だって彼女は・・・・・・、

「・・・分かりました。
 アーデン様への、エイラ様の想い。
 私は、それに添いたいと思います・・・。」
「貴女から、
 あの人を奪ってしまう事・・・本当に御免なさい。
 御免なさい・・・ミルス。」

 彼女の名は「ミルス・フルーレ」。
 神に仕える「剣神の一族・フルーレ家」の娘である彼女は。
 あの人の・・・ソルハイムの王・アーデンの子。次代の「炎神イフリート」を成す事を定められた「神成(かんなり)」なのだから。

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「それでは・・・我々は先に。
 どうかエイラ様も・・・・・・、」
 その後をどう繋げたものか・・・その場の誰よりも長く生きている長老でさえ、選ぶ言葉が見付からなかった。
 まさか自分の半身とも言える相手を失った娘に「早く引き上げ戻って来なさい」などとは言えない。例えそれが身を切るような極寒の氷原であっても、彼女の身を案じての事だったとしても。

 あれから半月もせず、アーデンは逝去した。
 最期を看取ったエイラによれば、苦しむ事なく眠るように逝ったのだ・・・と。
 勿論、皆アーデンの身を心配したけれど。彼らにしか許されない禁足地に踏み入る事も出来ず、誰一人としてアーデンの最期を知らない。
 そのアーデンの遺体は、他者への感染の恐れがある為と。大判で厚手の亜麻布で覆われた状態で、剣神の一族の者達により山の麓へと運び降ろされた。
 そして悲しみに暮れ咽び泣く葬列は、寒風吹きすさぶ極寒の氷原・グロブス渓谷へ。
 本来なら王族の埋葬地にて丁重に弔うべきなのだけれど・・・彼の死因を思えば大々的に送る事も叶わず。別れを告げる事も出来ない主の死など、その帰りを待ち続けたソルハイムの民らには耐えられないだろう。
 だからエイラは、アーデンの遺体をグロブス渓谷に葬る事を選んだ。
 この辺りはソルハイム領でも最も寒さの厳しい地域で。冬の時期ともなれば辺り一面が氷の大地へと変貌する。が・・・本流から流出した水が窪地に溜まる事で出来た湖は、本格的な冬が到来する前の今は薄氷が張る程度で。
 何時かの時まで・・・その氷下で、眠っていて貰おう・・・と。
 もう直ぐ本格的な冬がやって来る。そうなれば湖ごと凍り、今のままの彼の姿を封じてくれるだろう・・・彼の体を蝕んだ「極々微小な何らかの生き物」ごと。

 今も冷たい風が吹き荒れている。
 今夜にも、本格的な冬を告げる風雪がやってくる。

 厚手の布に覆われたままの彼は、今はまだ氷湖の上に横たえられていて。
 だが薄い氷は彼の重さに耐え兼ね、やがて彼を湖の底へと誘うだろう。
 だから「どうかそれまでは、彼の傍に居させて欲しい・・・」と。
 そのエイラの最後の願いを、剣神の一族の者達は受け入れた。
 この様な凍死してもおかしくない寒さの中。本当なら説得し、何としても連れ帰るべきだっただろうに・・・当たり前の様に「エイラ様は、対の娘なのだから仕方が無い」と。最後の時を惜しむ彼女を残し、彼らは先に戻って行った。
 それは「せめて最後は二人きりに・・・」という、彼らの心遣いだったのか・・・。

 皆が戻って行ったのを見送り、彼を覆う布から解放する。
 彼が好んでいた・・・いつも通りの白い聖衣を纏った姿は、あまりにいつも通りで。まるで生きている様で。
 その姿に・・・ついて来ていた黒チョコボが一枚、また一枚と。自らの羽根を引きちぎりアーデンの胸元へと乗せていく。こんな所で寝ているアーデンが寒そうだと思ったのか、何枚も、何枚も・・・。
「もう、大丈夫よ・・・暖かいって。
 これ以上は、貴方の羽が駄目になってしまうわ。
 アーデンの為に、有難う。」
 実際のところ、チョコボがどこまで自分達の言葉を理解しているのか分からない。
 そして人間の・・・彼の死を理解しているのかも。
 でもエイラの言葉に黒チョコボは「クェ・・・ッ」と、小さく鳴いた。いつもの元気さは、見る影も無い。
 島を出発してから、ずっと尽くしてきてくれたチョコボ達だったけれど・・・旅は終わったのだから、帰してやらなければならない。
「さぁ・・・貴方達は、先に自分の島へ帰りなさい。
 私も、お別れが済んだら戻るから・・・ね?」
「クェッ、クェ~ッ!」
 それは「自分も残る」と・・・「帰るなら一緒だ」と、そう言っている様だった。でも、
「お願い、言う事を聞いて。
 貴方は、自分の島に戻るの!
 戻ってこの先、貴方の子に、孫に伝えて・・・!」

 あの人の為に、彼の「想い出・記憶」を繋いで。

 自分の全てを「ソルハイムの王・アーデン」として捧げた、
 一人の「ルシス・チェラム」という男が居た事を。
 彼の「想い出・記憶」を、世界が忘れてしまわないように・・・。

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 別れを告げる様に大きく一鳴きし・・・走り去って行ったチョコボ達を見送る。
 白い白い世界に残ったのは、自分と彼だけで。
「私はね、貴方の隣りに居られれば、
 それで幸せだって・・・ずっと思ってたの、本当よ。」
 例え、貴方との子を望む事すら許されなくても。貴方の一番近くに居られるのは、傍で声を聞けるのは自分なのだから、と。
 でもこの旅で、当たり前にあったソルハイムの柵から離れて、周囲からは普通の恋人や夫婦の様に扱われて、貴方からこの首飾りを貰って・・・そして貴方の死を前にして、

「私は一人の人間として、
 貴方の最期の時を、自分だけのものにしたいと、
 そう、願ってしまった・・・!」

 まだ間に合ったかもしれない・・・生きられたかもしれない貴方の治療を断念し。
 まだ生きている貴方を死んだ事にして、彼らを島へと帰した。だって、だって・・・、

「最期くらい・・・、
 私だけを、見て欲しかった・・・。」

 ソルハイム王国への帰還・・・本来の旅の目的を成し、再び当たり前に「対の娘」として貴方の傍に居られるとは思えなかった。
 貴方への想いを一時の「想い出・記憶」として抱え生きて行くなんて、そんな事・・・耐えられなかった。だから・・・、

「御免なさい・・・私が・・・・・・!」

 込み上げる想いを抑え切れず・・・最後にもう一度、貴方に触れたくて。
 触れた途端に氷が割れ、その手から逃れる様に沈み行く・・・もうこの手は、貴方に届かない。
 いつも導いてくれたその手が、差し伸べられる事も無い。
 ただただ、彼を覆っていた亜麻の布が揺ら揺らと・・・揺らめき沈み行くのみで。

「貴方の命を・・・未来を、奪ってしまった・・・・・・!」

 それだけの罪を犯したのだから、どのような罰でも受ける覚悟は出来ていた。
 でも・・・、
 込み上げる嗚咽を堪える為、口元に当てていた手に別の感触を覚え。違和感に自身の掌を見ると・・・そこは彼と同じ、黒い血で穢れていた。

 これが・・・私に与えられた罰?

 だとしたら・・・貴方の傍で死ぬ事が、私に与えられた罰だというのなら・・・。
「貴方と共に、眠りに就けるのなら・・・私は・・・・・・、」

■□■□■□■□■□■□■□■□

 翌朝。戻らぬエイラを心配し、剣神の一族の者達が数名で様子を見にやって来た。
 その日は、夜間の風雪が嘘のように晴れていて・・・太陽の光を反射しキラキラと細氷が舞っており。

 それはまるで、神話の一幕のような美しい風景で。

 夜間の寒さで氷が張った湖にアーデンの亡骸は抱かれ。
 氷下の彼に寄り添う様に守る様に・・・事切れたエイラが横たわっていた。それはそれは死の恐怖とは無縁な、とても綺麗な顔で。

「エイラ様・・・!」
 一呼吸の後。分かっていて尚、咄嗟に駆け寄ろうとした老女を、長老が押し止め首を横に振る。一晩の寒さ程度では氷の厚さは大した事は無く、下手をすれば足元を持って行かれてしまうだろう。それに・・・、

「エイラ様は・・・氷神様は、
 死して尚、炎神様の傍にと、
 自らこの地で眠る事を選ばれたのだろう。」

 どれだけ時が経とうが、どれだけ世界が巡ろうが。
 悠久の時を・・・未来永劫、炎神と共に在る為に。

 ならばこのまま、そっとしておくべきだろう・・・と。

 以降、剣神の一族の者達は、この地域一帯を「神が眠る地」とし。
 神の兄妹・・・二神の眠りを妨げぬよう、妨げる者が現れぬようにと。
 彼ら自身が立ち入る事も、この地に関して口外する事も無かった・・・と言う。

 だから彼女は今も、極寒のグロブス渓谷で。
 未来永劫溶ける事の無いその腕に、愛する男の骸を抱き。
 彼の魂が戻る日を・・・ずっとずっと待っている。

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