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FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 53》

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《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
 【『ルシスの禁忌』とは (希望の灯~炎神の祭壇)】

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【『ルシスの禁忌』とは (希望の灯~炎神の祭壇)】
 カエムの港が前回「受入港」として利用されたのは、彼此二年以上も前。アーデンと従者達が新たな土地を求め、東の大陸へとやって来た時以来で。
 その時は西の大陸の漁村・・・と呼べるのかも分からない程の小さな集落だけど。普段から船を出して生活をやり繰りしている者達が、一行を東の大陸・カエムの港へと送り届けてくれた。
 しかしアーデン達の旅は、帰りが何時になるかも分からない旅で。当然の事ながら復路の為に、彼らがカエムの港に留まり続ける事など出来ない。
 なので、この時。予め両者の間で、帰りの船が必要になった時の為の合図を決めておいた。

 日の入りから四半時(=約30分)の間に、決められた合図通りに灯台の灯りを点灯させる。

 表向き、カエムの港は港としての機能を失っていたので。周囲から「使われていない筈の灯台が何故?」と、不審の目を向けられるのは具合が悪かった。何せ、灯台の維持に掛かる手間や費用は「何となく」で、片付けられるものでは無く、追及を躱すのは難しい。故に「気取られる、追及されるような事は避けるべき」と言うのが、彼らの基本的な姿勢だった。
 なので灯台守達は「いつの日にか、必要になるかもしれない」と・・・先祖代々、自分らに課した使命を全うする為、手入れを怠らず常に使用できるよう管理していても。
 普段は、灯台の灯りを点けてはいなかった。
 人知れず、ひっそりと・・・人目を忍び隠れるようにして。この港を、灯台を守り続けて来た。

 その灯台に、灯りが灯る時。
 王が・・・アーデンが、ソルハイムの地に帰還する。

 だから西の大陸の漁村の者達は、海向こうの東の大陸の灯台を眺め続けた。
「今日こそ、知らせがあるかもしれない。」
 いつ戻るかも分からない主が戻るまで、何日、何カ月、何年と、毎日毎日欠かす事無く・・・日の入りから四半時の間は、彼らにとっては祈りの時間でもあった。だから・・・、
「おいっ!灯台が!!
 アーデン様が、お戻りになるぞ!!」
 二年以上が経っていても、彼らが灯台の合図を見過ごす筈が無く。

 幸い、海は凪いでいる・・・明日は問題無く、船を出せるだろう。

 待ち望んだ希望の灯りに急ぎ集落の男衆を集め、明日の出航の打ち合わせと各自準備に取り掛かった。

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 このイオスの世界の人々の大半にとっては、海上の旅というのは馴染みがないものだった。何故なら、自分達が住む大陸から出る必要性が無かったから。それこそ海を生業とする漁師でも無ければ、一生に一度も船に乗った事が無い・・・位でも不思議では無い程に。
 なので臣下の青年二人にとっても、このような船での移動は当然初めての事で。生きた心地がしない・・・とまで言うと大袈裟だけれど。
 もし船底に穴でも開いたら?
 突然の大嵐に見舞われたら?
 大型の海洋動物やモンスターに襲われたら?
 海を知らない自分では、どれ一つとして解決出来そうにない。
 そんな自分自身を信用出来ない、自分の力ではどうしようもない状況に置かれているからこそ、考えても仕方が無い心配事ばかりが思考を占める・・・が。
 そもそも、海を知らない自分が思いつくような問題事など、海のプロである漁師たちは想定済みで。しかも信心深い彼らの事だ。王を迎えに行くのだから、万全の準備や対策をして迎えに来ているに違いない。
 実際、彼らはアーデンを迎えるにあたり、五隻の船に三人ずつという船団を組んでやってきた。こちらが当初のアーデンとエイラ、そして王剣の一族12名を想定していたとしても、随分と大掛かりだ。恐らく故障と言ったトラブルに対応できるよう、余裕を持たせた編成になっているのだろう。
 そこまで考えると「彼らが万全を期してくれている」だろうし「それで駄目なら、どうしようもなかった」のだと思えて・・・少し心が軽くなった。
 それが信頼なのか、救いなのか、逃げなのかは・・・分からないけど。

 因みに・・・その五隻の中。アーデン一行が案内された船は、他の船とは一線を画す船で。その船を操る三人も・・・言っては何だが、普通の漁師とは思えない雰囲気を纏っており、
「貴方方も、普段は漁に出ておられるのですか?」
 そう訊ねてみれば、キョトンと目を丸くした後、
「いや、アタシ達は・・・まぁ、用心棒みたいなモンだね。」
 ちょっとばかり恩があってさ・・・と、面白そうに笑い飛ばした。
 その「用心棒」という言葉に、一抹の不安を覚えたが・・・漁師達が自分達の船では無く、彼女の船にアーデンを預けている位なのだから。今回の件に限らず、普段から信頼されるのだろう・・・と思う事にした。
 すると、ずっと難しい顔をしていたのが気になったのか?
「お兄さん、船酔いは大丈夫っスか?」
「あぁ、今のところは。」
 その三人組の一人に問われ。自身の状況を客観的に分析しようと試みたものの・・・ずっと絶えずフワフワと足元が揺れる感覚は、わざわざ意識しない方が良い気がした。意識してしまうと、却って気持ち悪くなりそうだったから。
 そんな船旅初心者の青年に、少しばかり年上に見える男は水平線を指差し、
「海の上じゃ、気持ち悪いから降ろしてくれ、
 ・・・って訳にもいかないっスからね。
 風に当たりながら、水平線でも見てるとイイっスよ!」
 あとどれ位、時間が掛かるのか?
 初めての道のりは長く遠く感じると言うが・・・目途が立たない移動程、長く辛く退屈なモノは無い。それが見渡す限りの海、慣れない船旅ともなれば尚更で。
「あぁ、そうさせてもらおう。」
 海上は陸地と違って道が無いから、目的地まで一直線・・・なんて事は無い。何もない海に見えるだけで、実際には海流や岩礁などを避けて進まなければならないのだから。
 その事を考慮すれば、陸地とは違い「安全に進める道」が目に見えないからこそ。仮に大陸が見えたとしても、そこに辿り着くまでどれ位の時間が掛かるのかなんて、海を知らない自分に分かる筈が無く。
 どれ位、時間が掛かるのか分からないのなら、体力を温存しておくに限る。
 幸い船上では何をするでも、出来るでも無く。この慣れない揺れさえ気にならなければ、貴重な休息時間とも言えた・・・その揺れが一番の問題ではあるのだけれど。

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 それにしても・・・先日カエムの港滞在時に、迎えを呼ぶ為の合図の話を聞いた時には「本当に、それで伝わるのだろうか?」と、青年は疑問に思った。
 何せ前回アーデン達と別れてから、二年以上が経っているという話だったし。
 その二年間もの間。日没からの四半時を毎日毎日欠かす事無く、いつ戻るかも分からない主の為に捧げ続けると言うのは・・・なかなかに難しい事に思えたから。
 何が難しいって・・・彼らが「それ」を実行する事よりも。
 難しいのは、彼らが「それ」を実行してくれると信じる事。
 しかしアーデンは「彼らなら、成し遂げてくれる」と信じ、一方的な「それ」を自らの帰還の合図とした。
 もしかしたら、気付いてもらえないかもしれない。
 長い月日が経てば、そのような約束反故にされてしまうかもしれない。
 約束を取り付ける際。本来なら頭を過りそうなそれらを、彼は疑いもしなかったのだろう。
 そこにあるのは、民に対する圧倒的な信頼で。
 民が一方的に、アーデンを信頼しているのではない。
 アーデンが信頼するからこそ、民らもアーデンを信頼している・・・互いが信頼し合っているからこそ成り立つ関係性で。
 だからこそ彼らは、青年の心配など他所に、
「お迎えに上がりました、アーデン様。」
 嘗て主と交わした約束を違える事無く、当たり前に当然に迎えにやって来た。

 しかし、そのような感動の再会を前にしても、両者間双方に働く強固な信頼関係を目の当たりにしても、
 アーデンが、彼らが「当たり前に当然に」そのような事を遣って退ける事が。
 青年にとっては「当たり前でも当然でもない」・・・と、そう思えた。理解出来なかった。
 唯一理解出来たのは「どれだけ理解しようと努力しても、共感出来ない事もある」という事だけだった。

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 恐らくは、多分問題に遭遇する事も無く漁村に着いた・・・のだろう。
 だろう・・・というのは、海に慣れない青年にとっては「何か問題でも起こったのだろうか?」と思うような慌ただしさも。彼らにとっては「いつも通りの、通常運転」だったのかもしれないから。
 実際には色々あった気もするけれど、目的の達成「漁村に着いた」という結果を以て良しと判断するしかない。
 元々、終わり良ければ総て良し・・・という言葉は、嫌いでは無い。
 少なくとも「最悪」ではないし。
 終わりが悪いよりは、よっぽどマシだと思えるから。
 船を降りても地面が揺れ続けているような感覚に、
「あぁ、地面に足が着いてるってのは、
 やっぱり良いよな、相棒。」
 当たり前にある大地の有難さを噛み締めつつ、青年は大柄な体をグーッと伸ばすと。
 同じく何だかフラフラしているチョコボの頭を、ポンポンと宥める様に撫でてやった。 

 漁村に到着した、その日。
 アーデン一行は、主の帰還を待ち侘びた村人たちから大層歓迎され。寂れた集落ながらも、その夜は村を挙げての宴が催された。
 それはそうだろう・・・漸くの主の帰還だ。ある者は喜びに舞い歌い。ある者は感極まって涙を流し、
「此処までアーデン様を御守りいただき、
 本当に、有難うございます。」
 伝令役でしかないと恐縮する青年二人に、涙ながらに感謝を伝える者達まで居て。
 そして此処までの立役者・・・とも言えるチョコボ達も土間に上げてもらい。初めて見る巨大な鳥におっかなびっくり体を拭いてもらったり、何が食べられるだろうかと色々な物をご馳走になっていた。
 きっと村人達は「この幸せな時間が、いつまでも続けば・・・」と願ったに違いない。
 が・・・当のアーデンは、マイペースな姿勢を崩さず。
「明日の朝には、出発しようと思っているんだ。」
「長旅でお疲れでしょう。
 もう少し、ゆっくり休まれて行かれては・・・、」
「冬が来る前に、グロブス渓谷を抜けたいからね。
 あまりゆっくりもしていられないんだ。」
 青年らから見て、こういう所は寧ろ「人の心が無いのだろうか?」と、思わないでもない・・・ここまで尽くしてきてくれた村人たちが気の毒ですらある。
 しかし、その様なアーデンの在り方は、今に始まった事では無いのだろう。主の言葉に目に見えて意気消沈しながらも、この場を仕切る長老は、
「ここから先は、
 真っすぐソルハイム王国を目指されるのですか?」
「いや、道中の補給を兼ねて、
 炎神の祭壇に寄ろうと思っている。」
「そうですか・・・きっと剣神の一族の皆様も、
 喜ばれる事でしょう。」
 再会の喜びの涙から、別れの寂しさの涙へと。
 賑やかさに影が差してしまっても、誰一人として異を唱える者など居なかった。
「皆が灯台の灯りを見守り続けてくれたおかげで、
 私はソルハイムの地に戻る事が出来た。
 私を信じてくれた皆の想い、
 決して忘れはしない・・・有難う。」
 その言葉が聞けただけで、今までに費やしてきた時間や労力など・・・そんなモノは何の苦にもならなかった。
 彼の言葉には、それだけの「力」があった。

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 東の大陸に生まれ育った青年らにとって、当然の事ながら西の大陸・ソルハイム王国領は初めて訪れた未知の土地で。
「こりゃ、すげえな・・・。」
 目の前に広がる世界は色に乏しく、華やかな美しさとは対極にある存在だけれど。
 色に乏しいからこそ厳かで・・・吐く白い息の塊と共に、思わず感嘆の声が漏れた。
 アーデンの口ぶりではまだ冬では無い筈だけれど。岩肌の目立つ山岳の谷間や、平地でも山の影になる部分には雪が居座っており。それだけでも、雪や氷にすら馴染みが無い青年らを大いに驚かせた。

 だが今、目の前に聳える・・・氷や雪のヴェールを纏った、この世のモノならざる神秘的な光景を前にすれば。ただただ圧倒されるばかりで、月並みな「凄い」の一言すら出て来ない。
 まるで元は大きな山がザックリと切り落とされた様な・・・山の斜面というよりも、切り立った崖が目立つ山岳地帯には、幾つもの橋が掛けられていて。限られた平地には家屋とも施設とも取れる建物が、ポツリポツリと建っている。
 正直、常識では有り得ない。建物を建てるにしても、建てた後に住むにしても、このような立地では不便でしかないだろう。当然の疑問として「何故、わざわざあの様な場所に?」との思いが頭を過った・・・けれど。
「アーデン様、エイラ様。お帰りなさいませ。」
 山の登り口・・・と言えば良いのだろうか?一番手前の建物の前に立つ女性に声を掛けられ、疑問を投げ掛ける機会を逃してしまった。
 恭しく一行を出迎えた女性は、一言で言えば非常にエイラに似た女性だった・・・外見的特徴も、身に纏う空気感も。もしかしたら近い血縁なのかもしれない。が、二人に対して敬称を付けているのだから「対の娘」「氷神シヴァの娘」と扱われるエイラより地位としては下なのだろう。
 そう分析するも・・・相手に対して疑問を持っているのは、お互い様のようで。
「・・・そちらの方々は?」
 説明を求める様に首を傾げる女性に、アーデンは「ソルハイムまでの道中、私達の助けとなってくれた二人とチョコボ達だ」と、にこやかに説明してくれた。随分とアッサリ・・・しかもチョコボ達と一緒の括りではあったが、彼女にとっては「私達の助けとなってくれた」それで十分なのだろう。明らかにソルハイムの人間では無い二人ではあったけれど、あれこれ詮索してくる事は無かった。
 この山の登り口にある施設は、元々ソルハイム王国から遠路遥々やって来た人々を迎え入れる為の施設らしく。それこそ遠路遥々戻って来たアーデン一行も中に案内され、まずはそこで一服・・・しつつ語られた今の状況、そして今後の計画は次の様な話だった。

 まずここは、ソルハイムの「王剣の一族」の中でも、神事を執り司る「剣神の一族」が管理している聖域で。山頂にはソルハイムの主神・炎神イフリートを祀る「炎神の祭壇」があり、ソルハイムの民らにとっての巡礼の旅とは、この地を目指す事なのだと言う。
 ソルハイムの民にとっては、それ程までに尊く神聖な場所である、と。
 それはアーデンとエイラにとっても、重要な意味を持つ場所で。
 だからこそ補給に寄ったこの機会に、山頂の「炎神の祭壇」にて祈りを捧げたいのだと言う。
 青年二人にすれば、それは別に構わない。自分達の役割は伝令役なのだから「一刻も早く、ソルハイム王国に向かうように」と、二人の行動に制限を掛ける権利など端から無いし、特に急いで欲しいとも思っていなかったから。
 でもここで先程の女性から、一つの問題が提示された。
「アーデン様とエイラ様が祭壇に向かわれる間、
 お二人は、如何なさいますか?」と。
 あの山を山頂まで登るのは大変そうだな・・・そう覚悟を決めた矢先の事で。出鼻を挫かれた状況に視線で説明を求めると、女性は申し訳なさそうに視線を落とし、
「先程申し上げましたように、
 ここは炎神様を祀る神聖な地。
 しかし東の大陸の貴方方にすれば、あの、その・・・、」

「炎神様は・・・炎神イフリートは、
 裏切り者なのでしょう?」

 アーデンの側に在るおかげで感謝され、誰もその事を責めはしなかった。自分達ですら忘れていた・・・気にもしていなかった。自分達の祖先が、彼らが崇め奉る炎神イフリートを悪神に堕とし、存在すら消し去った事なんて。
 だってそんな大昔の事、自分達のせいじゃない。
 でも彼ら彼女らにとっては、そうでは無いのだろう。誰だって自分が大切にしているモノを貶されれば辛く悲しいモノで、人によっては怒りを覚えても仕方が無い。
 個人的には、アーデンやエイラとは良好な関係を築けていると思うし。漁師達など道中出会ったソルハイムの人々とも、それなりに付き合えていると思っていた。少なくとも、悪感情を抱かれているかもしれないなんて・・・彼らの態度からは、そんな風には思えなかった。
 でも、こう言った「ソルハイムの信仰」に係わる部分に触れる度、やはり「根本に横たわる何かが違う」のだと思い知らされる・・・自分が今まで形成して来た常識を、ズグリと短剣で切り開かれるような。自分の常識で覆い隠してしまった、その中身を開示されるような。
 そこから目を逸らすなと・・・そう言われている様で、だからこそ目を逸らしたくなる。
 自分達はそんな事、思っていない。でも・・・そう言ったところで、だ。
 そんな事、思っていないどころか、炎神イフリートという存在すら知らなかった自分達に、どうこう言う資格があるとは思えないし。此方の言葉が想いが正しく、彼女の心に響くとも思えない。
 そんな返す言葉も無く黙り込んでしまった二人に、助け舟を出したのはエイラで、
「彼女は貴方達を責めている訳では無いのよ。
 ここは炎神イフリートを祀る聖域だから、
 貴方達にとっては、
 恐ろしい場所なのではないかと心配しているだけ。ね?」
「・・・は、はい。
 勘違いさせてしまったようで・・・御免なさい。」
 成程、信仰とはそういうモノなのか・・・東の大陸では巨神タイタンを信仰する者が多いが、それもメテオに由来する実用性あっての事で。その恩恵すら少ない辺境の地出身の彼らにすれば、それこそ精神的な信仰など縁遠く。そもそも自身に信仰心が無いのだから、己の信仰に背く地になど留まりたくないのでは・・・なんて発想浮かぶ筈が無い。
 が・・・信仰とは関係無しに「大事な場所」と置き換え想像してみれば。そう気遣われても、彼女らにとっての聖域に、自分達の様な余所者がズカズカと入り込むのも気が引け。
「ここは剣神の一族が守る聖域。
 何かあっても、直ぐに助けを呼べるわ。
 だから貴方達はここで、
 私達の帰りを待ってはどうかしら?」
「それとも・・・私達がこの機会に乗じて、
 どこかに逃げると思ってる?
 大丈夫よ。ここは橋で繋がれた一本道しかないから。
 ここを通らずに、どこかへ逃げる事なんて出来ないわ。」
 暗に「同行せずとも、此処で見張ってれば大丈夫」と言われているのだろうけど・・・内容とは裏腹に、幼い少女の様に茶目っ気たっぷりに言われてしまえば「それでも同行します」とは言い難く。
「・・・分かりました。
 では我々は、此処で待機させていただきます。
 どうか、お気を付けて。」
「私の我儘に付き合わせて済まない。
 そう長居はしないつもりだから、
 しばらくの間、ここで待っていて欲しい。」
 この地は彼らにとっての聖域で、その聖域を守るのは剣神の一族・・・きっと主の為なら、どのような努力も犠牲も厭わない者達だろう。そして二人が自らの使命を投げ出し逃げるなど在り得ない・・・それ位の事は、さすがに自分でも分っているつもりで。
 だからこそ青年らは、本来の任務「伝令役」「見守り役」から離れ、登山口の施設で二人が戻るのを待つ事にし。アーデンとエイラ、そして付いて行くと言って聞かなかった二人のチョコボ達の背を見送った。
「ここを過ぎたら、ソルハイム王国なんだろ?
 慌ただしくなるだろうし、
 今のうちに、休んでおこうぜ。」
「あぁ・・・そうだな。」
 ソルハイム王国に着いたら、それこそアーデン達は休む間もない毎日だろう。ソルハイムの移住計画「ソルハイムの民を、皆が生きやすい土地へ」と言う目的達成を前にして、アーデンがその足を止めるとは思えない。

 だからきっと、彼らにとっても此処が、最後の休息の地となるだろうから。
 二人の時間が穏やかで、幸せなものであれば良いと願う。
 王でも神でも無い・・・個人として過ごせる、最後の時間なのだから。

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