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FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 49》
- 2025/09/15 (Mon) |
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《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (敬虔なる漁師達~私を見て)】
《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (敬虔なる漁師達~私を見て)】
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【『ルシスの禁忌』とは (敬虔なる漁師達~私を見て)】
ソルハイム移住計画は「陸路ではなく、航路での移動」と、具体的な方向性が定まった事で、一定の前進・・・なかなか踏み出せなかった、大きな一歩を踏み出した。
とは言っても、大陸から出る事が無かったソルハイム育ちの従者達に、海の事は分からないので。
この島からソルハイム王国のある大陸まで、どれ位の日数が掛かるのか?
海の様子からして、何時の時期・季節が航海に適しているのか?
慣れた彼らの漁船で船団を組み迎えに行くのか、それとも新たに船を用意する必要があるのか・・・などなど。
この辺りの事が決まらない事には、従者達に出来る事は無い。
早く皆を迎えに行きたいのに・・・何も出来ない状況に、もどかしい思いばかりが募っていく。
そんな従者達とは対照的に。漁師達は他の地域の者達からの非難の目に屈する事も無く、アーデンの為に日々働いていた。
ソルハイム王国は、東の大陸の者達にとっては悪神・・・炎神イフリートを主神と崇める国なので。その様な国の者達を迎え入れる協力をしているなど許される事では無い、裏切り行為だと彼らは漁師達を非難した。
しかし彼らと漁師達は、元々良好な関係とは言い難い関係だった。
と言うのも、大昔にソルハイムの民が世界に散らばって行ったのは、独立では無く人口増加に対する版図拡大の為。なので移住していった民らにとっての「一等地」は、海を挟んで本国(旧ソルハイム王国・スカープ地方)が臨めるクレイン地方、主神である炎神イフリートが住まうラバティオ火山周辺で。
そこでは無い土地に住む人々は「何らかの理由で、より遠くへ行く事を選らばざるを得なかった」から東へ、そこも駄目なら更に東へ・・・と、自分達が住める土地を求めた結果「本国から遠い東の土地へと流れ着いた」という経緯がある。
なので一般的な傾向として、ラバティオ火山に近い地域の集団ほど格が上で、生活水準も高く。
逆に、東の大陸の東端で暮らしていた漁師達は「東の大陸の人々に、大陸の端まで追いやられた人々」・・・彼らからは格下と虐げられている立場にあった。それは海の知識など無かった彼らの祖先が、危険な海に出て食料を得なければならなかった・・・他に食料を得る方法が無かった程に。
だから今更非難の目を向けられた所で、漁師達は何て事は無かった。
どんなに詰られても、勝手に言わせておけばイイと相手にしなかった。
何故なら彼らは、神の為に働いているのだから。
神の為に、船を造ろう。
神の言葉に従い、船を出そう。
神を待つ同胞を迎えに行こう・・・慈悲深き神の御心のままに。
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「船の手筈が整う前に、
陸路で一度、ソルハイムに戻ろうと思うんだ。」
主の思考が理解不能なのは、今に始まった事では無い・・・それは今回の旅で嫌と言う程、思い知った筈だったけど。
「・・・どういう事でしょうか?」
正直、主の言わんとする事の一割も分かった気がしない。ここまで理解不能なのは珍しい事だった・・・思わず不躾に半眼になってしまうのも許してほしいと思う。
が、そんな視線に込められた、従者の感情など知る由も無く。
アーデンの言い分としては。船の目途が立ち、それに対して人員や食料・物資を用意するとなると、実際に迎えの船を出せるのはまだまだ先の話となる。なのでその前に一度ソルハイムに戻り、民らに移住の決断と準備を促そう・・・と言う事だった。
確かにアーデンはソルハイムを発つ際「皆が心安らかに過ごせる土地を探す為、旅立つのだ」と、民らに旅の目的をきちんと告げ。見送る子供に「あぁ、必ず私が迎えに来る。だからそれまで、待っていておくれ」と約束して旅立った。
だから民らも「新たな土地が見付かれば、必ず主が迎えに来てくれる」と信じ、その時には「自分達もこの地を去り、新たな地に移るのだ」と、理解し待ってくれている筈。
けれど・・・アーデン一行がソルハイムを発って、既に二年以上が経っている。いくらその覚悟があったとしても、彼らには彼らの今の生活が有る訳で。迎えが来た時の為に常に荷物を用意しておき、迎えが来たからと言って直ぐに発てる訳では無いだろう。残る一族の者達に後を任せ旅立った従者達とは違って、彼らは今住む土地を捨て旅立たなくてはならないのだから。
そう説明されると成程、主の言う事は尤もに聞こえる。迎えの船を出した所で、彼らの準備が整うまで漁師達を待機させておかなければならない・・・と言うのは時間も食料も無駄に思うし。
何より突然やって来た素性も知れぬ者達に「迎えに来た」と言われても・・・民らも付いて行くのを躊躇うだろう。しかも経験した事も無い「船に乗って」なのだから、不安や恐怖が勝って当然だ。それは理解出来た、理解出来たけれど・・・、
「だからと言って、
供も就けずにソルハイムまで戻るなど・・・危険過ぎます!」
過去に「海を歩いて渡るなど・・・無茶が過ぎます!」「ソルハイムからの移住に、海を渡るなど・・・!」と異を唱えて来た従者は、三度そう声を上げた。もしかしたらコレが自分に与えられた役目なのかもしれない・・・と思わないでもない。何だか村の入り口で「ここは〇〇の村だよ」という役割を与えられた者に親近感を覚える。
「確かに事をスムーズに運ぶ為には、
先触れは必要かと思います。
しかしそれであれば、他の者を向かわせては如何でしょうか?」
王剣の一族と言えば、ソルハイム王国の中枢を担う12の一族の総称で。勿論、アーデンには遠く及ばないものの、王国内では大きな力を有している。なので自分達の言葉なら民らも信じてくれるだろう。何もアーデン自ら先触れ役を買って出なくても、自分達の中の誰かが行けば良い話だ。
それがどうしても無理だと言うのなら・・・仮にもしどうしてもアーデンが行くと言うのなら。こちらは信頼できる臣下達に任せ、王剣の一族全員を同行させるか。全員が無理なら、せめて何人かを選び同行させるべきだろう。
何故、そう命じてくれないのか?
主を危険な旅に送り出すなど、建国より忠誠を誓ってきた一族の末裔達としては有り得ない。主の側に在る事こそ何よりの喜びであり、誉れであると言うのに。
そんな従者達の想いをアーデンはバッサリと切り捨て・・・否、切り捨てたという感覚すら持っていないのだろう平坦さで命じた。
「いや、君たちが持つ専門的な知恵や技術は、
この島の開拓・発展に必要不可欠なものだ。
移住してくるソルハイムの民の為にも、
その力は島の・・・新たな国の為に使ってもらいたい。」
誰かを行かせるにしても、誰かを同行させるにしても「主の側に居る者・居られない者」を選ぶ事になる。それは王剣の一族が「建国より忠誠を誓ってきた12の一族は平等である」との精神から与えられた称号である事を考えれば、その理念に反する事になるし。実際に王剣の一族の中から「主の側に居る者・居られない者」が選ばれれば、彼らは内心穏やかでは居られないだろう。先祖代々彼らは、それ程の忠誠と献身を捧げて来たのだから。
でもそれすら「だから平等である為に、主は誰も選ばなかったのだ」と、自分自身を納得させる理由に過ぎないと・・・分かっている、ずっと側に在ったのだから。
主は民にとっての最善を選んでいる・・・その結果が「平等」に見えるだけで、個々に対し「平等に扱おう」と意識している訳では無いのだろう。きっとそんな些末な事、神の視点の前では取るに足らない事で。
そのような視点で世界を見ているアーデンの考えなど、理解出来る筈が無く。
それは誰一人として、彼自身を理解する事も出来ない。
これだけの人々に愛されていながらも、誰からも理解されないと言う事。
だからこそ理解したいと思う、寄り添いたいと思う、一人放っておけない。
きっとアーデンが暴君であれば、こんな感情抱かなくて済んだのに・・・神に対して「貴方が心配だ」なんて、そんな烏滸がましい自分勝手。
「本当に、大丈夫なのですか?
もしアーデン様に何かあれば・・・、
ソルハイムの同胞達を悲しませる事になるのですよ?」
だから無駄だと分かっていても、問い掛けずにはいられない。
問い掛けたところで、言外に含めた「貴方が心配だ」という思いが伝わる事は無いのだから・・・彼が情に揺らぐ事は無い、彼の意思を決定を覆す事など出来ない。そんな事は分かり切っていても。
「今回は普通に旅するつもりだから、
ここまでのように道なき辺境の地を行く訳でも無い。
出来れば寄り道も控えるつもりだから大丈夫だよ。」
その「大丈夫だよ」は、相手を安心させる為では無い。
相手に「大丈夫なのですか?」と聞かれたから、「大丈夫だよ」と言う事実を伝えているだけで・・・結局その「大丈夫だよ」を信じるしかないのだ。
では実際の所、本当にソルハイムまでの「普通の旅」が「大丈夫」なのかと言うと。
移動距離が長いのは、どうしようもないにしても。彼が言う「普通に旅するつもり」が、街道を通り、街に立ち寄り、宿に泊まってと・・・一般的にイメージされる「普通の旅」であるのなら。
本当に普通にキチンと正しく「普通の旅」の心得を持って、ソルハイムを目指してくれるのであれば、その言葉を信じて良いのなら。
確かに此処までの旅程に、困難な旅にはならないだろう。
いや、人の好いアーデンが悪意ある者にホイホイ付いて行かなければ・・・とも付け足しておべきか?
どうしても・・・どうしても、その最後の部分が心配で仕方が無いのだけれど。
そんな従者達の胡乱な視線を受け、アーデンは何を勘違いしたのか「好まないだけで、それなりに剣も扱える!」と、心外だと言わんばかりに唇を尖らせた。
因みにアーデンは幼少の頃から「自らの身は、自分で守るべし」との教えを守り、鍛錬に励んできた。その剣の腕前は忖度無しに一流と言っても差し支えなく・・・残念ながら誰一人として、そんな心配はしていなかった。
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お伽話などでは一国の王子が世界を救う為に一人旅立ったりするが・・・よくよく考えれば、その国の兵士なり何なりは何をしているのだ?作り話だと言ってしまえばそれまでだが、同じ立場に立たされればどうにも納得出来ない。
送り出さなければならない、送り出すしかない・・・主の決断を覆す事など出来ないと分かっていても「どうぞ、お気を付けて」など、そう簡単に割り切る事など出来ない。何とかならないものかと従者達が苦慮する中、
エイラだけは、これを好機と捉えていた。
漁師たちと言う心強い味方は得たモノの、それは特殊なケースであって。
この島でのアーデンを取り巻く環境は、率直に言って悪い方向へと傾き続けている。その傾きは急激では無いモノの、湖面に落とした一滴の猛毒が広がり行く様に・・・彼に対する悪意は浸透し、人々の心の中に目には見えない淀みを齎す。
そう、目には見えないのが質が悪い。件の男が「力の善悪は別として、多くの民が彼の奇跡の力を信じているのも事実」と、言ったように。表立って反抗・批判するのは周囲の熱に浮かされた一部の人間達だけで。多くの民はアーデンを悪神の遣いとするも、その報復を恐れてか寧ろ従順ですらあった。
そして従者達は、そんな民らの従順さを恐れた・・・彼らの真意が分からない、何をキッカケに牙を剥くかも分からないから。
それに心配事はアーデンの事だけでは無かった。それは彼らが「王」と信仰するソムヌスに対する矛盾。
民らに仕事を任せるにあたっては「今後の国造りを見越し、同じ地域の者同士に拘るのでは無く、得意な役割・職種を優先し任せたい」と・・・今まで交流の無かった地域同士の人間が、同じ組で働く仕組みになっていた。
つまり馴染みのない人間同士が集められたコミュニティーだったので、現体制に対する不平不満なんて自分の心の内を口にする事は出来なかった。
が・・・共に仕事に励み、その成果が見え、それだけの時間が経った今。初めは警戒や遠慮から会話が少なかった者達も、仕事以外の話題も気軽に話せる間柄になっていて。
会話が増えると言う事は、それに伴い様々な情報が・・・良い情報、悪い情報に係わらず広く回ると言う事。
島に渡ってそれなりの月日が経ったが、それでも「現状、アーデンとソムヌスの関係を正確に理解している者は居ないだろう」と、エイラ達は思っている。実際、血の繋がった兄弟でもない、親子程に年の離れた二人が「兄弟」の関係にあるのは、彼らの「神としての役割」に由来するモノで。ソルハイムの信仰を失った彼らに、その関係を理解する事は難しいだろう。それどころか末端まで行けば、ソムヌスがアーデンを「兄上」と呼んでいる事すら知らない有様で・・・二人に関する情報は、人伝の噂や憶測による部分が大きかった。
しかし、そこまで話が広がれば、互いに話す機会が増えれば・・・情報のピースが埋まるにつれ「兄弟」云々を抜きにしても、自分達の信仰が矛盾している事にいずれ気付くだろう。
ソムヌスだってソルハイムの・・・悪神・イフリートを主神と崇める国の人間ではないか、と。
尤も、エイラ達にとっては「王はアーデンであり、アーデンは王」なので、別にソムヌスが「王」から外される事自体は問題にならない。そもそもソムヌスが王など、あり得ないのだから。
が、アーデンが王位から弾かれ、ソムヌスが外され。民らが「自分達の中から王を選ぼう」となり、その中で「自分に馴染み深い同郷の者を推す」動きが加速し・・・その結果、民らの間で対立構造が出来上がってしまうのは不味かった。
何故か・・・それはおそらく、あの男がそれを許さないから。
エイラは件の男を信頼している訳では無い。寧ろ「ソムヌスを王に据える」と公言しているのだから、敵対関係にあると言っても過言では無い。
ただ・・・彼の「ソルハイムの同胞を今一度、一つに」という考えは、嘘偽りない本心なのだろうと思えた。アーデンや自分達とは違う方法であっても、彼は彼でソルハイムの同胞達の事を思っているのだろう、と。
だとすれば・・・聡い彼は、そのような事態になる前に動く筈。
「然るべき場所に身を隠して頂き。
表向きには、アーデン様は亡くなったと発表する。」
ソムヌスに対する信仰が、求心力が失われる前に。
民らの間で、無用な王位争いが起きる前に。
せっかく集ったソルハイムの同胞達が、再び袂を分かつてしまう前に。
そのような状況を把握していたエイラにすれば「アーデンがソルハイムに一度戻る」・・・つまり「この島から、いったん離れる」と言うのは、悪い話では無かった。
自分達の味方、ソルハイムからの移住を待つ余裕は無い・・・それはアーデン不利の現状を覆す手が無く、現状自分達だけではどうしようもない事を意味していて。
行き着くのは、アーデンが彼の罠に嵌められるのを手を拱いて待つしかない・・・という未来。
しかもそれを知っているのは自分だけとなれば、エイラは自分に出来る事を選ぶしかなかった。
目の前に伸びた道は、選べる道は多くは無い。
でも道が有るのなら、選び取ってやろうと思った・・・見えない先を恐れ、此処で立ち止まってしまうよりも。
そう、何時やって来るかも分からぬ好機を待つのではなく。手遅れになる前の今、自ら打って出る・・・アーデン自ら、ソルハイムの民を迎えに行く。
その結果、アーデンの身柄を拘束・管理出来ないとなれば、件の男も軽率に「アーデンは死んだ」など言えないだろう。アーデンが生きて帰還すれば、全ては嘘偽りとバレてしまう・・・あの男が、そんな愚かな策を立てるとは思えない。
そして「アーデンの旅」に乗じて、追手を差し向けるような卑劣なマネもしないだろう。
彼は彼なりのやり方で、ソルハイムの王には敬意を持っているのだから。
そうこれは「逃げる」のでも「逃がす」のでも無い。
だってアーデン自身は、そんな事情など露知らず。
エイラ自身も「アーデンを逃がす」とは思っていないのだから。
確かにソルハイムまでの長い道のりを、王剣の一族の護衛も無しに戻るなど、本来なら有り得ない。
でも此処に居て、何も出来ず都合の良い物語に仕立て上げられ・・・後になってそれを後悔するくらいなら。
「・・・アーデン。」
「エイラ、君は私と一緒に。
長旅になるだろうから、準備をしておいてほしい。」
呼び掛ければ、当たり前のように帰ってくる言葉。
その言葉に、エイラが驚く事は無い。だってそんな事「当たり前」だったから。
そして従者達も驚かない。だって彼らにとっても「当たり前」だったから。
「エイラ、君は私と一緒に。」
対の存在・・・それはソルハイム建国より続く「兄妹神の絆」、共にある事が定められた二人の在り方で。
(貴方が、そう言ってくれるなら。)
エイラには、差し伸べられた手を取らないなんて選択は無かった。
でも「ずっと一緒に居たい」という思いが、果たして兄を慕い想う気持ちだけなのか・・・一緒に居るのが当たり前過ぎて、自分の感情を疑問に思う事すら無かった。
否・・・疑問に思ってはいけないと、その本心から目を逸らし蓋をしていた。
(私を見て・・・!)
私に向けられる貴方の視線、私だけを映して欲しいと願っている。
でもそれは・・・きっと永遠に告げる事のない、口にする事が許されない「真実」。
【『ルシスの禁忌』とは (敬虔なる漁師達~私を見て)】
ソルハイム移住計画は「陸路ではなく、航路での移動」と、具体的な方向性が定まった事で、一定の前進・・・なかなか踏み出せなかった、大きな一歩を踏み出した。
とは言っても、大陸から出る事が無かったソルハイム育ちの従者達に、海の事は分からないので。
この島からソルハイム王国のある大陸まで、どれ位の日数が掛かるのか?
海の様子からして、何時の時期・季節が航海に適しているのか?
慣れた彼らの漁船で船団を組み迎えに行くのか、それとも新たに船を用意する必要があるのか・・・などなど。
この辺りの事が決まらない事には、従者達に出来る事は無い。
早く皆を迎えに行きたいのに・・・何も出来ない状況に、もどかしい思いばかりが募っていく。
そんな従者達とは対照的に。漁師達は他の地域の者達からの非難の目に屈する事も無く、アーデンの為に日々働いていた。
ソルハイム王国は、東の大陸の者達にとっては悪神・・・炎神イフリートを主神と崇める国なので。その様な国の者達を迎え入れる協力をしているなど許される事では無い、裏切り行為だと彼らは漁師達を非難した。
しかし彼らと漁師達は、元々良好な関係とは言い難い関係だった。
と言うのも、大昔にソルハイムの民が世界に散らばって行ったのは、独立では無く人口増加に対する版図拡大の為。なので移住していった民らにとっての「一等地」は、海を挟んで本国(旧ソルハイム王国・スカープ地方)が臨めるクレイン地方、主神である炎神イフリートが住まうラバティオ火山周辺で。
そこでは無い土地に住む人々は「何らかの理由で、より遠くへ行く事を選らばざるを得なかった」から東へ、そこも駄目なら更に東へ・・・と、自分達が住める土地を求めた結果「本国から遠い東の土地へと流れ着いた」という経緯がある。
なので一般的な傾向として、ラバティオ火山に近い地域の集団ほど格が上で、生活水準も高く。
逆に、東の大陸の東端で暮らしていた漁師達は「東の大陸の人々に、大陸の端まで追いやられた人々」・・・彼らからは格下と虐げられている立場にあった。それは海の知識など無かった彼らの祖先が、危険な海に出て食料を得なければならなかった・・・他に食料を得る方法が無かった程に。
だから今更非難の目を向けられた所で、漁師達は何て事は無かった。
どんなに詰られても、勝手に言わせておけばイイと相手にしなかった。
何故なら彼らは、神の為に働いているのだから。
神の為に、船を造ろう。
神の言葉に従い、船を出そう。
神を待つ同胞を迎えに行こう・・・慈悲深き神の御心のままに。
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「船の手筈が整う前に、
陸路で一度、ソルハイムに戻ろうと思うんだ。」
主の思考が理解不能なのは、今に始まった事では無い・・・それは今回の旅で嫌と言う程、思い知った筈だったけど。
「・・・どういう事でしょうか?」
正直、主の言わんとする事の一割も分かった気がしない。ここまで理解不能なのは珍しい事だった・・・思わず不躾に半眼になってしまうのも許してほしいと思う。
が、そんな視線に込められた、従者の感情など知る由も無く。
アーデンの言い分としては。船の目途が立ち、それに対して人員や食料・物資を用意するとなると、実際に迎えの船を出せるのはまだまだ先の話となる。なのでその前に一度ソルハイムに戻り、民らに移住の決断と準備を促そう・・・と言う事だった。
確かにアーデンはソルハイムを発つ際「皆が心安らかに過ごせる土地を探す為、旅立つのだ」と、民らに旅の目的をきちんと告げ。見送る子供に「あぁ、必ず私が迎えに来る。だからそれまで、待っていておくれ」と約束して旅立った。
だから民らも「新たな土地が見付かれば、必ず主が迎えに来てくれる」と信じ、その時には「自分達もこの地を去り、新たな地に移るのだ」と、理解し待ってくれている筈。
けれど・・・アーデン一行がソルハイムを発って、既に二年以上が経っている。いくらその覚悟があったとしても、彼らには彼らの今の生活が有る訳で。迎えが来た時の為に常に荷物を用意しておき、迎えが来たからと言って直ぐに発てる訳では無いだろう。残る一族の者達に後を任せ旅立った従者達とは違って、彼らは今住む土地を捨て旅立たなくてはならないのだから。
そう説明されると成程、主の言う事は尤もに聞こえる。迎えの船を出した所で、彼らの準備が整うまで漁師達を待機させておかなければならない・・・と言うのは時間も食料も無駄に思うし。
何より突然やって来た素性も知れぬ者達に「迎えに来た」と言われても・・・民らも付いて行くのを躊躇うだろう。しかも経験した事も無い「船に乗って」なのだから、不安や恐怖が勝って当然だ。それは理解出来た、理解出来たけれど・・・、
「だからと言って、
供も就けずにソルハイムまで戻るなど・・・危険過ぎます!」
過去に「海を歩いて渡るなど・・・無茶が過ぎます!」「ソルハイムからの移住に、海を渡るなど・・・!」と異を唱えて来た従者は、三度そう声を上げた。もしかしたらコレが自分に与えられた役目なのかもしれない・・・と思わないでもない。何だか村の入り口で「ここは〇〇の村だよ」という役割を与えられた者に親近感を覚える。
「確かに事をスムーズに運ぶ為には、
先触れは必要かと思います。
しかしそれであれば、他の者を向かわせては如何でしょうか?」
王剣の一族と言えば、ソルハイム王国の中枢を担う12の一族の総称で。勿論、アーデンには遠く及ばないものの、王国内では大きな力を有している。なので自分達の言葉なら民らも信じてくれるだろう。何もアーデン自ら先触れ役を買って出なくても、自分達の中の誰かが行けば良い話だ。
それがどうしても無理だと言うのなら・・・仮にもしどうしてもアーデンが行くと言うのなら。こちらは信頼できる臣下達に任せ、王剣の一族全員を同行させるか。全員が無理なら、せめて何人かを選び同行させるべきだろう。
何故、そう命じてくれないのか?
主を危険な旅に送り出すなど、建国より忠誠を誓ってきた一族の末裔達としては有り得ない。主の側に在る事こそ何よりの喜びであり、誉れであると言うのに。
そんな従者達の想いをアーデンはバッサリと切り捨て・・・否、切り捨てたという感覚すら持っていないのだろう平坦さで命じた。
「いや、君たちが持つ専門的な知恵や技術は、
この島の開拓・発展に必要不可欠なものだ。
移住してくるソルハイムの民の為にも、
その力は島の・・・新たな国の為に使ってもらいたい。」
誰かを行かせるにしても、誰かを同行させるにしても「主の側に居る者・居られない者」を選ぶ事になる。それは王剣の一族が「建国より忠誠を誓ってきた12の一族は平等である」との精神から与えられた称号である事を考えれば、その理念に反する事になるし。実際に王剣の一族の中から「主の側に居る者・居られない者」が選ばれれば、彼らは内心穏やかでは居られないだろう。先祖代々彼らは、それ程の忠誠と献身を捧げて来たのだから。
でもそれすら「だから平等である為に、主は誰も選ばなかったのだ」と、自分自身を納得させる理由に過ぎないと・・・分かっている、ずっと側に在ったのだから。
主は民にとっての最善を選んでいる・・・その結果が「平等」に見えるだけで、個々に対し「平等に扱おう」と意識している訳では無いのだろう。きっとそんな些末な事、神の視点の前では取るに足らない事で。
そのような視点で世界を見ているアーデンの考えなど、理解出来る筈が無く。
それは誰一人として、彼自身を理解する事も出来ない。
これだけの人々に愛されていながらも、誰からも理解されないと言う事。
だからこそ理解したいと思う、寄り添いたいと思う、一人放っておけない。
きっとアーデンが暴君であれば、こんな感情抱かなくて済んだのに・・・神に対して「貴方が心配だ」なんて、そんな烏滸がましい自分勝手。
「本当に、大丈夫なのですか?
もしアーデン様に何かあれば・・・、
ソルハイムの同胞達を悲しませる事になるのですよ?」
だから無駄だと分かっていても、問い掛けずにはいられない。
問い掛けたところで、言外に含めた「貴方が心配だ」という思いが伝わる事は無いのだから・・・彼が情に揺らぐ事は無い、彼の意思を決定を覆す事など出来ない。そんな事は分かり切っていても。
「今回は普通に旅するつもりだから、
ここまでのように道なき辺境の地を行く訳でも無い。
出来れば寄り道も控えるつもりだから大丈夫だよ。」
その「大丈夫だよ」は、相手を安心させる為では無い。
相手に「大丈夫なのですか?」と聞かれたから、「大丈夫だよ」と言う事実を伝えているだけで・・・結局その「大丈夫だよ」を信じるしかないのだ。
では実際の所、本当にソルハイムまでの「普通の旅」が「大丈夫」なのかと言うと。
移動距離が長いのは、どうしようもないにしても。彼が言う「普通に旅するつもり」が、街道を通り、街に立ち寄り、宿に泊まってと・・・一般的にイメージされる「普通の旅」であるのなら。
本当に普通にキチンと正しく「普通の旅」の心得を持って、ソルハイムを目指してくれるのであれば、その言葉を信じて良いのなら。
確かに此処までの旅程に、困難な旅にはならないだろう。
いや、人の好いアーデンが悪意ある者にホイホイ付いて行かなければ・・・とも付け足しておべきか?
どうしても・・・どうしても、その最後の部分が心配で仕方が無いのだけれど。
そんな従者達の胡乱な視線を受け、アーデンは何を勘違いしたのか「好まないだけで、それなりに剣も扱える!」と、心外だと言わんばかりに唇を尖らせた。
因みにアーデンは幼少の頃から「自らの身は、自分で守るべし」との教えを守り、鍛錬に励んできた。その剣の腕前は忖度無しに一流と言っても差し支えなく・・・残念ながら誰一人として、そんな心配はしていなかった。
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お伽話などでは一国の王子が世界を救う為に一人旅立ったりするが・・・よくよく考えれば、その国の兵士なり何なりは何をしているのだ?作り話だと言ってしまえばそれまでだが、同じ立場に立たされればどうにも納得出来ない。
送り出さなければならない、送り出すしかない・・・主の決断を覆す事など出来ないと分かっていても「どうぞ、お気を付けて」など、そう簡単に割り切る事など出来ない。何とかならないものかと従者達が苦慮する中、
エイラだけは、これを好機と捉えていた。
漁師たちと言う心強い味方は得たモノの、それは特殊なケースであって。
この島でのアーデンを取り巻く環境は、率直に言って悪い方向へと傾き続けている。その傾きは急激では無いモノの、湖面に落とした一滴の猛毒が広がり行く様に・・・彼に対する悪意は浸透し、人々の心の中に目には見えない淀みを齎す。
そう、目には見えないのが質が悪い。件の男が「力の善悪は別として、多くの民が彼の奇跡の力を信じているのも事実」と、言ったように。表立って反抗・批判するのは周囲の熱に浮かされた一部の人間達だけで。多くの民はアーデンを悪神の遣いとするも、その報復を恐れてか寧ろ従順ですらあった。
そして従者達は、そんな民らの従順さを恐れた・・・彼らの真意が分からない、何をキッカケに牙を剥くかも分からないから。
それに心配事はアーデンの事だけでは無かった。それは彼らが「王」と信仰するソムヌスに対する矛盾。
民らに仕事を任せるにあたっては「今後の国造りを見越し、同じ地域の者同士に拘るのでは無く、得意な役割・職種を優先し任せたい」と・・・今まで交流の無かった地域同士の人間が、同じ組で働く仕組みになっていた。
つまり馴染みのない人間同士が集められたコミュニティーだったので、現体制に対する不平不満なんて自分の心の内を口にする事は出来なかった。
が・・・共に仕事に励み、その成果が見え、それだけの時間が経った今。初めは警戒や遠慮から会話が少なかった者達も、仕事以外の話題も気軽に話せる間柄になっていて。
会話が増えると言う事は、それに伴い様々な情報が・・・良い情報、悪い情報に係わらず広く回ると言う事。
島に渡ってそれなりの月日が経ったが、それでも「現状、アーデンとソムヌスの関係を正確に理解している者は居ないだろう」と、エイラ達は思っている。実際、血の繋がった兄弟でもない、親子程に年の離れた二人が「兄弟」の関係にあるのは、彼らの「神としての役割」に由来するモノで。ソルハイムの信仰を失った彼らに、その関係を理解する事は難しいだろう。それどころか末端まで行けば、ソムヌスがアーデンを「兄上」と呼んでいる事すら知らない有様で・・・二人に関する情報は、人伝の噂や憶測による部分が大きかった。
しかし、そこまで話が広がれば、互いに話す機会が増えれば・・・情報のピースが埋まるにつれ「兄弟」云々を抜きにしても、自分達の信仰が矛盾している事にいずれ気付くだろう。
ソムヌスだってソルハイムの・・・悪神・イフリートを主神と崇める国の人間ではないか、と。
尤も、エイラ達にとっては「王はアーデンであり、アーデンは王」なので、別にソムヌスが「王」から外される事自体は問題にならない。そもそもソムヌスが王など、あり得ないのだから。
が、アーデンが王位から弾かれ、ソムヌスが外され。民らが「自分達の中から王を選ぼう」となり、その中で「自分に馴染み深い同郷の者を推す」動きが加速し・・・その結果、民らの間で対立構造が出来上がってしまうのは不味かった。
何故か・・・それはおそらく、あの男がそれを許さないから。
エイラは件の男を信頼している訳では無い。寧ろ「ソムヌスを王に据える」と公言しているのだから、敵対関係にあると言っても過言では無い。
ただ・・・彼の「ソルハイムの同胞を今一度、一つに」という考えは、嘘偽りない本心なのだろうと思えた。アーデンや自分達とは違う方法であっても、彼は彼でソルハイムの同胞達の事を思っているのだろう、と。
だとすれば・・・聡い彼は、そのような事態になる前に動く筈。
「然るべき場所に身を隠して頂き。
表向きには、アーデン様は亡くなったと発表する。」
ソムヌスに対する信仰が、求心力が失われる前に。
民らの間で、無用な王位争いが起きる前に。
せっかく集ったソルハイムの同胞達が、再び袂を分かつてしまう前に。
そのような状況を把握していたエイラにすれば「アーデンがソルハイムに一度戻る」・・・つまり「この島から、いったん離れる」と言うのは、悪い話では無かった。
自分達の味方、ソルハイムからの移住を待つ余裕は無い・・・それはアーデン不利の現状を覆す手が無く、現状自分達だけではどうしようもない事を意味していて。
行き着くのは、アーデンが彼の罠に嵌められるのを手を拱いて待つしかない・・・という未来。
しかもそれを知っているのは自分だけとなれば、エイラは自分に出来る事を選ぶしかなかった。
目の前に伸びた道は、選べる道は多くは無い。
でも道が有るのなら、選び取ってやろうと思った・・・見えない先を恐れ、此処で立ち止まってしまうよりも。
そう、何時やって来るかも分からぬ好機を待つのではなく。手遅れになる前の今、自ら打って出る・・・アーデン自ら、ソルハイムの民を迎えに行く。
その結果、アーデンの身柄を拘束・管理出来ないとなれば、件の男も軽率に「アーデンは死んだ」など言えないだろう。アーデンが生きて帰還すれば、全ては嘘偽りとバレてしまう・・・あの男が、そんな愚かな策を立てるとは思えない。
そして「アーデンの旅」に乗じて、追手を差し向けるような卑劣なマネもしないだろう。
彼は彼なりのやり方で、ソルハイムの王には敬意を持っているのだから。
そうこれは「逃げる」のでも「逃がす」のでも無い。
だってアーデン自身は、そんな事情など露知らず。
エイラ自身も「アーデンを逃がす」とは思っていないのだから。
確かにソルハイムまでの長い道のりを、王剣の一族の護衛も無しに戻るなど、本来なら有り得ない。
でも此処に居て、何も出来ず都合の良い物語に仕立て上げられ・・・後になってそれを後悔するくらいなら。
「・・・アーデン。」
「エイラ、君は私と一緒に。
長旅になるだろうから、準備をしておいてほしい。」
呼び掛ければ、当たり前のように帰ってくる言葉。
その言葉に、エイラが驚く事は無い。だってそんな事「当たり前」だったから。
そして従者達も驚かない。だって彼らにとっても「当たり前」だったから。
「エイラ、君は私と一緒に。」
対の存在・・・それはソルハイム建国より続く「兄妹神の絆」、共にある事が定められた二人の在り方で。
(貴方が、そう言ってくれるなら。)
エイラには、差し伸べられた手を取らないなんて選択は無かった。
でも「ずっと一緒に居たい」という思いが、果たして兄を慕い想う気持ちだけなのか・・・一緒に居るのが当たり前過ぎて、自分の感情を疑問に思う事すら無かった。
否・・・疑問に思ってはいけないと、その本心から目を逸らし蓋をしていた。
(私を見て・・・!)
私に向けられる貴方の視線、私だけを映して欲しいと願っている。
でもそれは・・・きっと永遠に告げる事のない、口にする事が許されない「真実」。
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