落書き帳の10ページ目
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FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 42》
- 2025/07/28 (Mon) |
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《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (王の玉座~旅立ちの時)】
《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (王の玉座~旅立ちの時)】
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【『ルシスの禁忌』とは (王の玉座~旅立ちの時)】
こうしてアーデンのイオスの世界を巡る旅には「対の存在である【氷神の一族】の娘・エイラ」と、「各【王剣の一族】より代表として選ばれた12人」が同行。
その旅には「王の一行である証明」「新しい土地での建国の証」として、ソルハイム王国の三種の神器とされる「光り輝く指輪」「水晶の首飾り」「王の玉座」が持ち出される事となった。
が、自身が懸念したように、アーデンとエイラが元より身に付けている「光り輝く指輪」と「水晶の首飾り」は兎に角、本来「王の玉座」は持ち運ぶような物では無い。そのことに関して国民がどう思うのか・・・いっその事「国民が異を唱えてくれないだろうか?」と、思わないでもなかったけれど。
残念ながら、そうはならなかった。
ソルハイムの民らにとって「王の玉座」は、建国時より続くソルハイムの魂とも言える物で。
王が腰を落ち着けた場所・・・つまり「王の玉座」を安置し、王が玉座に座し建国を宣言してこそ、彼らにとっての「新生ソルハイム王国」なので。
王が「新たな土地を探しに行く」と言うなら、その「王の玉座」をこの場に置いて行くのは、彼らの魂の在り方に反すると言う事らしい。遡る事、数世代前。スカープ地方からウェルエタム地方へと移住した際、当時の民らが「王の玉座」を新たな地へと運んだ・・・という過去の事実があるだけに「自分たちの代で、脈々と受け継がれて来た先祖の思いを裏切るような事は出来ない」のだと。
確かにアーデンも「王の玉座」に込められたソルハイムの歴史と魂・・・脈々と受け継がれて来た先祖の思いは大切だと思っている。
でも王であるアーデンにすれば、民より大事なモノなどないのだから。同行してくれる彼らに負担を強いてまで、そのような考えに拘る必要は無いと思う・・・と言ったところで、彼らは納得しないのだけれど。
だからこれに関しては、本人たちがそれを望んでいる以上、彼らと話し合っても覆らないと決着済みなので。アーデンは蒸し返す事なく、彼らが望むよう受け入れた。
ソルハイムの記憶だ魂だって言うなら・・・安置するに相応しい土地が見付かるまで、大事に大事に国で守っておけば良かったのにね。
でも皆が「持って行きたい」「持って行って下さい」って言うなら、それが民の望みなら・・・その思いを、彼らの選んだ道を断つ事は出来なかったんだ。
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しかし出発前になって、新たな問題が発生した。
王の許可を得た同行者たちは、玉座を運ぶ準備に取り掛かっていた。
過去、実際に運んだ事があるとはいっても、その時は民族全体での大移動だった事を考えれば、運び手もたくさん居た筈なので。当然今回の、王であるアーデンと、対の娘・エイラ。そして同行者「王剣の一族」12人での旅では、同じようにとはいかない。
なので前回同様、玉座としての最小限の形と、その他の各パーツに分けた後。
更に軽量化を図る為、建国時より継承されるソルハイムの歴史「石の座面」と。玉座の背面にあしらわれていた石板・・・ソルハイムの繁栄を示す4つの地域の紋章からなる「ソルハイムの紋章」部分を取り外し。
その二つを用意しておいた木製の玉座に取り付け、それを井桁に組んだ担ぎ棒に固定する事で、ソルハイムの歴史と魂を、まだ見ぬ新たな地へ運ぼうと試みた。
その様子を見て・・・どうやって運ぶつもりなのか心配していたアーデンは安心した。
「四か所の担ぎ棒を我々12名で分担すれば、
旅に支障を来す事無く、玉座を運べるでしょう。」
彼ら曰く。井桁に組んだ四か所の担ぎ棒を2人ずつ計8人で担げば、残り4人は体を休めることが出来るし。何かトラブルに遭遇しても、その4人に初動を任せる事が出来るので安心との事。
確かにそれなら、それなりに現実味がある方法に思える・・・石の塊を二つ積んでいる時点で、決して軽い物では無いけれど。少なくとも荒れ果てた道なき道を、重い石の玉座を引き摺って周るよりはマシだろう。
実際に今、組み上げた玉座を試しに8人掛かりで担ぎ上げているが・・・彼らの様子を見るに、無茶な行程を強行しない限り大丈夫そうだった。
そしてエイラが同行する以上、彼らは無茶な道は選ばないし、適度な休憩も受け入れる。
つまり彼女の存在がストッパーとなる事で、本来なら無茶を承知で進もうとする彼らを止められる状況にあるので・・・無茶にしか思えなかった玉座を担いでの旅も、状況さえ見誤らなければ無事成し遂げらるように思えた。
だから一番問題と思われていたここまでは順調で・・・出発前になって発生した新たな問題とは、
「兄上、姉上!!」
「あら?そんなに走っては、転んでしまうわよ?」
組み上げた玉座の担ぎ具合も確認し、出発の時を待つのみとなった場に、十歳にも満たない一人の少年が駆け込んで来た。その後ろを、同じ意匠の衣服を纏った男が追い掛けてくる・・・その意匠は「剣神の一族」を、示すもので。
「遅いぞ!王をお待たせするとは、どういう事だ?!」
「申し訳ございません。
その、実は・・・・・・、」
「だって・・・置いて行かれてしまうと思って!」
「ソムヌスが、どうしても自分がと言って聞かず・・・、」
ほとほと困った様子の男の言葉に、その場に居た大人たちは顔を見合わせた。
王が『炎神イフリート(兄)』、娘が『氷神シヴァ(妹)』、そして「王剣の一族」の中でも神事を執り司る「剣神の一族」より選ばれた子が『剣神バハムート(弟)』として交わす「神の兄妹弟の契」は、今尚ソルハイムの民らの間で熱く信仰される仕来りだった。
だからこそ王であり『炎神イフリート』であるアーデンが旅立つのなら、対の妹であり『氷神シヴァ』であるエイラが旅に同行するのは当たり前で。
本来なら「神の兄妹弟」として本当に兄妹同然に育てられたソムヌスが『剣神バハムート(弟)』として旅に同行するのも、エイラ同然に当然の事だった。
でも、それには大きな問題があった・・・それはソムヌスが「まだ十歳にも満たない幼い子供」だったという事。
だから「剣神の一族」の者たちは、今回の同行者を選抜するにあたってソムヌスを候補から外した。彼らとしても自分たち一族の役割を思えば、今代の『剣神バハムート』であるソムヌスをアーデンの側にと送り出すのが務めだとは思っていたけれど・・・如何せん今回の過酷な旅の同行者としては幼すぎる。
王の対として守られて然るべきエイラとは違って。
ソムヌスの場合は『剣神バハムート』だからと言って、特別扱いされる事は無い・・・と言うよりも「王剣の一族」の在り方として、それはあってはならない。何故なら12の「王剣の一族」は王の下に平等であり、あくまでも『剣神バハムート』は「剣神の一族」が担う役職の一つという扱いだから。
一族の立場では、平等対等であるべき他の一族の者達に『炎神イフリート(アーデン)』の弟である『剣神バハムート(ソムヌス)』なのだから、この子も守ってやって欲しい・・・と言う訳にも。
ソムヌスは『剣神バハムート』としてであって、それとは別に「剣神の一族」から別の者を同行させて欲しい・・・と願い出る訳にもいかない。
ソムヌスが同行すると言うのであれば、それは「剣神の一族」の代表として王に仕えると言う事で。他の大人同様の扱いを受け入れ、その役割を果たさなければならない・・・幼いからという理由は通用しない。
そこまで考えた上で、やはり王や他の者に迷惑を掛ける・・・足を引っ張る事になるのは分かり切っていたので、一族の者達は別の者を「剣神の一族」の代表として送り出すつもりでいた。
のが、いざ出発直前になって、誤魔化し続けて来たソムヌスに気付かれてしまった・・・これが、
「兄上、姉上!!」
「あら?そんなに走っては、転んでしまうわよ?」
先の話へと繋がり、詳しい経緯は分からないものの・・・その場にいた大人たちは、この状況をどう収めるべきか思案した。
王の下に平等な12の「王剣の一族」とは言っても、それぞれが専門職を担い、それぞれの立場があるので、一から十まで同じ一枚岩の考えという訳では無い。行き着く所が「全ては我らが王の為に」という王への忠誠であっても、思想を強制している訳では無いので、そこに至るまでの考え方は一族によって自由で様々だった。
だから一族によっては『剣神バハムート』を排出する「剣神の一族」に対して、若干の複雑な思いがあるのは否めなかった。嘗て「彼ら一族だけが特別では無い」との王の想いから、それぞれの一族が「王剣の一族」という称号を賜った。その経緯をもってしても、その経緯があるからこそ「12の一族は平等であるべき」という考えから、彼らは「剣神の一族」『剣神バハムート』を特別扱いする事を良しとしなかった・・・どの程度にかは、それぞれだったけれど。
そのような事情があるので、正直ソムヌスに付いてきてもらった所で扱いに困る。子供だから大人同様の務めを強いる事は出来ず、かと言って付いてくるなら子ども扱いする訳にもいかないのだから。
でもソムヌス自身は、年相応に純粋なもので、
「僕は、自分の事は自分で責任を持ちます。
決して、足手まといにはなりません。
勿論、兄上の為に「剣神の一族」の者として尽くします。
だから僕も同行させて下さい・・・!」
強がりでも虚勢でもない・・・その言葉は本心なのだろうけど。
「ソムヌス・・・『剣神バハムート』として、
同行したいという想いは尊重するが。
今回の旅は、過酷なものとなる。
だから我々は「剣神の一族」の者として、
王をお支え出来る者に同行して貰いたい。」
誰も言い出せない中、同行者達の中でも年長である者が、ソムヌスの申し出を退けた。
それは私情云々では無く、当然の主張と言えた・・・そもそもソムヌスにだって辛い旅となるのが目に見えていて。何なら、ここで思い止まらせてやる方が親切だろう。そう思ったから、皆彼の意見に賛同した。それに・・・、
「足手まといにはならないと言ったが。
お前の背丈では、この玉座は担げない。
お前が付いてくると言う事は、
それだけで担ぎ手が一人減る・・・実際、足手まといなんだ。」
それに関しては事実ではあったけど・・・それを言うのは酷な気がして、誰も言葉を繋ぐ事が出来なかった。その事実を突き付けられたソムヌスの表情があまりに可哀そうで、見ていられなかった。
小さな歩幅でも人一倍歩けばイイ、重たい荷物だって頑張って運ぶ・・・そうやって気持ちで何とかなるモノなら、何とでも頑張るつもりだった。兄と姉と居られるなら、何だって耐えられるつもりだった。
でも、玉座の担ぎ棒を担ぐのに背丈が足りない・・・と言うのは、どうしようもない。
自分が同行する事で担ぎ手が一人減ると言う事は、他の者達にその皺寄せが行ってしまう。自分のせいで他の者達の負担が増えてしまう・・・それは足手まといになってしまう、と言う事。
だから「それなら仕方がない」と、思えれば良かった。
事実、どうしようもないんだから。
他の皆に迷惑を掛けてまで付いて行っても、足を引っ張るだけだ・・・と。
でもソムヌスは諦められなかった。
どうすれば良いかなんて分からなかったけど、どうしても二人と一緒に居たかった。
兄姉弟として、ずっと一緒だったんだから・・・自分だけ置いてけぼりなんて嫌だった。
とは言え・・・ソムヌスの思いがどうであっても、現実問題としてソムヌスが同行するのは無理だと、その場に居た大人たちは思っていた。
だから最終決定権を持つ王の言葉を待った「お前には、この地で待っていて欲しい」と。
しかしアーデンはソムヌスの前にしゃがみ込むと、泣き出しそうな弟を持ち上げ・・・彼らが担ぐ玉座に座らせた。
「・・・!どういうおつもりですか?!」
その行為に、彼らが戸惑うのは当然だった。
重い荷物が更に重くなる・・・なんて些細な事でどうでもイイ。
彼らが問題視したのは「アーデンがソムヌスを玉座に座らせた」と言う事。
ここまでして運ぼうとした玉座・・・それはソルハイムの歴史と魂であって、王以外が座するなど言語道断。許される事では無く、担ぎ上げられたソムヌス自身が一番困惑していた。
が、当のアーデンはと言えば、ひりつく空気をものともせず。いつもの穏やかな笑みを浮かべてこう告げた。
「玉座は王が座るから玉座であって、本質は椅子だ。
だから椅子を必要とする者が座ればよい。
それに玉座だって、椅子本来の役割が果たせて本望だろう。」
ソルハイムの歴史だ魂だと言われているけど、玉座は椅子なんだから、必要なら椅子として使ってやればよい・・・きっと玉座だって、その方が椅子としての役割を果たせて幸せだろうと。
勿論、ソルハイムの歴史や魂は大切だけど、それだけに囚われてはいけない・・・物事の本質を見極める目が無ければ、歴史や魂なんてファンタジーだけで民は守れない。
「見知らぬ土地では、神託を乞う必要もあるだろう。
その時『剣神バハムート』の存在は欠かせない。
玉座の事なら、ソムヌスの代わりに私が担ぐから。
どうか私の弟も同行させてやって欲しい。」
ソルハイムの王は『炎神イフリート』の現人神より続く尊い血統であるなど・・・誰よりも歴史や魂なんてファンタジーを一身に纏う存在でありながら。
民を導く王としてのアーデンの視点は、何時だって物事の本質・・・幾重にも重なる「幻想」の中核にある「真実」を見据えていた。
アーデンは何時だって「真実」を見失う事は無く、
故に誰よりも「真実」を知っていた。
穏便に断ってくれると思っていた王にそう頼まれては、臣下である彼らに反対する事など出来ない・・・王が代わりに担ぐという事に関しては、何とか撤回してもらいたい所だけれど。きっとそれも「私が言い出した事だから」と、人の好い王は聞かないだろう。
そんな遣り取りの末の、想定外のソムヌスの同行。勿論それは他の「王剣の一族」の者達にとっては不安要素ではあったけれど・・・それでもどこかに確かにアーデンとエイラ、そしてソムヌスが一緒に居られる事に安堵していた。
それはきっと古来より受け継がれてきた、ソルハイムの民としての信仰。一族が何だかんだ言ったところで、神の魂で繋がる三人を引き離す事には抵抗もあるし畏れもある。だから、
「王がそう仰るのであれば、我らはそれに従いましょう。
だからソムヌス、お前は其方に座っていなさい。」
「で、でも!
僕が乗ってればその分、重たくなるし・・・歩いて」
「重い玉座を担ぎながら、
お前の狭い歩幅に合わせて歩く方が大変なんだ。
分かったら大人しく座ってろ。」
「皆がそう言うのだから、お言葉に甘えなさい。
ねぇ、アーデン?」
「あぁ、エイラの言う通り。
甘えられるうちに、甘えておけばいい。
子供が子供でいられるのは幸せな事だ。」
大人が子供に無理を強いなければならない・・・大人同様に子供を扱わなければならない世界ほど、王として辛く悲しく申し訳ない世界は無いのだから。
子供には子供らしく、笑っていて欲しいと思う・・・笑える世界であって欲しいと願う。
「全てのソルハイムの民が、心穏やかでありますように。」と。
その使命を果す為に、アーデンとエイラ。
そしてソムヌスを含む「王剣の一族」12人は、ソルハイムの三種の神器「光り輝く指輪」「水晶の首飾り」「王の玉座」を携え、
「アーデン様!
新しい国が出来たら、絶対に迎えに来てね!」
「あぁ、必ず私が迎えに来る。
だからそれまで、待っていておくれ。」
多くの民らに惜しまれつつも、イオスの世界を巡る旅へと旅立った。
新しい土地に新しい国を興す前提で動いてた・・・もうこの土地は長く持たないって、分かっていたんだ。
だから本当なら、悠長に旅してる時間なんて無かった。
でも世界には色々な問題が起こっていて、助けを求める人たちがいて・・・それを見捨てる事なんて出来なかったから。
結果として、彼らを長く待たせる事になってしまった。
あの時「必ず私が迎えに来る」って約束した子も、ずっと待っててくれたのに。
【『ルシスの禁忌』とは (王の玉座~旅立ちの時)】
こうしてアーデンのイオスの世界を巡る旅には「対の存在である【氷神の一族】の娘・エイラ」と、「各【王剣の一族】より代表として選ばれた12人」が同行。
その旅には「王の一行である証明」「新しい土地での建国の証」として、ソルハイム王国の三種の神器とされる「光り輝く指輪」「水晶の首飾り」「王の玉座」が持ち出される事となった。
が、自身が懸念したように、アーデンとエイラが元より身に付けている「光り輝く指輪」と「水晶の首飾り」は兎に角、本来「王の玉座」は持ち運ぶような物では無い。そのことに関して国民がどう思うのか・・・いっその事「国民が異を唱えてくれないだろうか?」と、思わないでもなかったけれど。
残念ながら、そうはならなかった。
ソルハイムの民らにとって「王の玉座」は、建国時より続くソルハイムの魂とも言える物で。
王が腰を落ち着けた場所・・・つまり「王の玉座」を安置し、王が玉座に座し建国を宣言してこそ、彼らにとっての「新生ソルハイム王国」なので。
王が「新たな土地を探しに行く」と言うなら、その「王の玉座」をこの場に置いて行くのは、彼らの魂の在り方に反すると言う事らしい。遡る事、数世代前。スカープ地方からウェルエタム地方へと移住した際、当時の民らが「王の玉座」を新たな地へと運んだ・・・という過去の事実があるだけに「自分たちの代で、脈々と受け継がれて来た先祖の思いを裏切るような事は出来ない」のだと。
確かにアーデンも「王の玉座」に込められたソルハイムの歴史と魂・・・脈々と受け継がれて来た先祖の思いは大切だと思っている。
でも王であるアーデンにすれば、民より大事なモノなどないのだから。同行してくれる彼らに負担を強いてまで、そのような考えに拘る必要は無いと思う・・・と言ったところで、彼らは納得しないのだけれど。
だからこれに関しては、本人たちがそれを望んでいる以上、彼らと話し合っても覆らないと決着済みなので。アーデンは蒸し返す事なく、彼らが望むよう受け入れた。
ソルハイムの記憶だ魂だって言うなら・・・安置するに相応しい土地が見付かるまで、大事に大事に国で守っておけば良かったのにね。
でも皆が「持って行きたい」「持って行って下さい」って言うなら、それが民の望みなら・・・その思いを、彼らの選んだ道を断つ事は出来なかったんだ。
■□■□■□■□■□■□■□■□
しかし出発前になって、新たな問題が発生した。
王の許可を得た同行者たちは、玉座を運ぶ準備に取り掛かっていた。
過去、実際に運んだ事があるとはいっても、その時は民族全体での大移動だった事を考えれば、運び手もたくさん居た筈なので。当然今回の、王であるアーデンと、対の娘・エイラ。そして同行者「王剣の一族」12人での旅では、同じようにとはいかない。
なので前回同様、玉座としての最小限の形と、その他の各パーツに分けた後。
更に軽量化を図る為、建国時より継承されるソルハイムの歴史「石の座面」と。玉座の背面にあしらわれていた石板・・・ソルハイムの繁栄を示す4つの地域の紋章からなる「ソルハイムの紋章」部分を取り外し。
その二つを用意しておいた木製の玉座に取り付け、それを井桁に組んだ担ぎ棒に固定する事で、ソルハイムの歴史と魂を、まだ見ぬ新たな地へ運ぼうと試みた。
その様子を見て・・・どうやって運ぶつもりなのか心配していたアーデンは安心した。
「四か所の担ぎ棒を我々12名で分担すれば、
旅に支障を来す事無く、玉座を運べるでしょう。」
彼ら曰く。井桁に組んだ四か所の担ぎ棒を2人ずつ計8人で担げば、残り4人は体を休めることが出来るし。何かトラブルに遭遇しても、その4人に初動を任せる事が出来るので安心との事。
確かにそれなら、それなりに現実味がある方法に思える・・・石の塊を二つ積んでいる時点で、決して軽い物では無いけれど。少なくとも荒れ果てた道なき道を、重い石の玉座を引き摺って周るよりはマシだろう。
実際に今、組み上げた玉座を試しに8人掛かりで担ぎ上げているが・・・彼らの様子を見るに、無茶な行程を強行しない限り大丈夫そうだった。
そしてエイラが同行する以上、彼らは無茶な道は選ばないし、適度な休憩も受け入れる。
つまり彼女の存在がストッパーとなる事で、本来なら無茶を承知で進もうとする彼らを止められる状況にあるので・・・無茶にしか思えなかった玉座を担いでの旅も、状況さえ見誤らなければ無事成し遂げらるように思えた。
だから一番問題と思われていたここまでは順調で・・・出発前になって発生した新たな問題とは、
「兄上、姉上!!」
「あら?そんなに走っては、転んでしまうわよ?」
組み上げた玉座の担ぎ具合も確認し、出発の時を待つのみとなった場に、十歳にも満たない一人の少年が駆け込んで来た。その後ろを、同じ意匠の衣服を纏った男が追い掛けてくる・・・その意匠は「剣神の一族」を、示すもので。
「遅いぞ!王をお待たせするとは、どういう事だ?!」
「申し訳ございません。
その、実は・・・・・・、」
「だって・・・置いて行かれてしまうと思って!」
「ソムヌスが、どうしても自分がと言って聞かず・・・、」
ほとほと困った様子の男の言葉に、その場に居た大人たちは顔を見合わせた。
王が『炎神イフリート(兄)』、娘が『氷神シヴァ(妹)』、そして「王剣の一族」の中でも神事を執り司る「剣神の一族」より選ばれた子が『剣神バハムート(弟)』として交わす「神の兄妹弟の契」は、今尚ソルハイムの民らの間で熱く信仰される仕来りだった。
だからこそ王であり『炎神イフリート』であるアーデンが旅立つのなら、対の妹であり『氷神シヴァ』であるエイラが旅に同行するのは当たり前で。
本来なら「神の兄妹弟」として本当に兄妹同然に育てられたソムヌスが『剣神バハムート(弟)』として旅に同行するのも、エイラ同然に当然の事だった。
でも、それには大きな問題があった・・・それはソムヌスが「まだ十歳にも満たない幼い子供」だったという事。
だから「剣神の一族」の者たちは、今回の同行者を選抜するにあたってソムヌスを候補から外した。彼らとしても自分たち一族の役割を思えば、今代の『剣神バハムート』であるソムヌスをアーデンの側にと送り出すのが務めだとは思っていたけれど・・・如何せん今回の過酷な旅の同行者としては幼すぎる。
王の対として守られて然るべきエイラとは違って。
ソムヌスの場合は『剣神バハムート』だからと言って、特別扱いされる事は無い・・・と言うよりも「王剣の一族」の在り方として、それはあってはならない。何故なら12の「王剣の一族」は王の下に平等であり、あくまでも『剣神バハムート』は「剣神の一族」が担う役職の一つという扱いだから。
一族の立場では、平等対等であるべき他の一族の者達に『炎神イフリート(アーデン)』の弟である『剣神バハムート(ソムヌス)』なのだから、この子も守ってやって欲しい・・・と言う訳にも。
ソムヌスは『剣神バハムート』としてであって、それとは別に「剣神の一族」から別の者を同行させて欲しい・・・と願い出る訳にもいかない。
ソムヌスが同行すると言うのであれば、それは「剣神の一族」の代表として王に仕えると言う事で。他の大人同様の扱いを受け入れ、その役割を果たさなければならない・・・幼いからという理由は通用しない。
そこまで考えた上で、やはり王や他の者に迷惑を掛ける・・・足を引っ張る事になるのは分かり切っていたので、一族の者達は別の者を「剣神の一族」の代表として送り出すつもりでいた。
のが、いざ出発直前になって、誤魔化し続けて来たソムヌスに気付かれてしまった・・・これが、
「兄上、姉上!!」
「あら?そんなに走っては、転んでしまうわよ?」
先の話へと繋がり、詳しい経緯は分からないものの・・・その場にいた大人たちは、この状況をどう収めるべきか思案した。
王の下に平等な12の「王剣の一族」とは言っても、それぞれが専門職を担い、それぞれの立場があるので、一から十まで同じ一枚岩の考えという訳では無い。行き着く所が「全ては我らが王の為に」という王への忠誠であっても、思想を強制している訳では無いので、そこに至るまでの考え方は一族によって自由で様々だった。
だから一族によっては『剣神バハムート』を排出する「剣神の一族」に対して、若干の複雑な思いがあるのは否めなかった。嘗て「彼ら一族だけが特別では無い」との王の想いから、それぞれの一族が「王剣の一族」という称号を賜った。その経緯をもってしても、その経緯があるからこそ「12の一族は平等であるべき」という考えから、彼らは「剣神の一族」『剣神バハムート』を特別扱いする事を良しとしなかった・・・どの程度にかは、それぞれだったけれど。
そのような事情があるので、正直ソムヌスに付いてきてもらった所で扱いに困る。子供だから大人同様の務めを強いる事は出来ず、かと言って付いてくるなら子ども扱いする訳にもいかないのだから。
でもソムヌス自身は、年相応に純粋なもので、
「僕は、自分の事は自分で責任を持ちます。
決して、足手まといにはなりません。
勿論、兄上の為に「剣神の一族」の者として尽くします。
だから僕も同行させて下さい・・・!」
強がりでも虚勢でもない・・・その言葉は本心なのだろうけど。
「ソムヌス・・・『剣神バハムート』として、
同行したいという想いは尊重するが。
今回の旅は、過酷なものとなる。
だから我々は「剣神の一族」の者として、
王をお支え出来る者に同行して貰いたい。」
誰も言い出せない中、同行者達の中でも年長である者が、ソムヌスの申し出を退けた。
それは私情云々では無く、当然の主張と言えた・・・そもそもソムヌスにだって辛い旅となるのが目に見えていて。何なら、ここで思い止まらせてやる方が親切だろう。そう思ったから、皆彼の意見に賛同した。それに・・・、
「足手まといにはならないと言ったが。
お前の背丈では、この玉座は担げない。
お前が付いてくると言う事は、
それだけで担ぎ手が一人減る・・・実際、足手まといなんだ。」
それに関しては事実ではあったけど・・・それを言うのは酷な気がして、誰も言葉を繋ぐ事が出来なかった。その事実を突き付けられたソムヌスの表情があまりに可哀そうで、見ていられなかった。
小さな歩幅でも人一倍歩けばイイ、重たい荷物だって頑張って運ぶ・・・そうやって気持ちで何とかなるモノなら、何とでも頑張るつもりだった。兄と姉と居られるなら、何だって耐えられるつもりだった。
でも、玉座の担ぎ棒を担ぐのに背丈が足りない・・・と言うのは、どうしようもない。
自分が同行する事で担ぎ手が一人減ると言う事は、他の者達にその皺寄せが行ってしまう。自分のせいで他の者達の負担が増えてしまう・・・それは足手まといになってしまう、と言う事。
だから「それなら仕方がない」と、思えれば良かった。
事実、どうしようもないんだから。
他の皆に迷惑を掛けてまで付いて行っても、足を引っ張るだけだ・・・と。
でもソムヌスは諦められなかった。
どうすれば良いかなんて分からなかったけど、どうしても二人と一緒に居たかった。
兄姉弟として、ずっと一緒だったんだから・・・自分だけ置いてけぼりなんて嫌だった。
とは言え・・・ソムヌスの思いがどうであっても、現実問題としてソムヌスが同行するのは無理だと、その場に居た大人たちは思っていた。
だから最終決定権を持つ王の言葉を待った「お前には、この地で待っていて欲しい」と。
しかしアーデンはソムヌスの前にしゃがみ込むと、泣き出しそうな弟を持ち上げ・・・彼らが担ぐ玉座に座らせた。
「・・・!どういうおつもりですか?!」
その行為に、彼らが戸惑うのは当然だった。
重い荷物が更に重くなる・・・なんて些細な事でどうでもイイ。
彼らが問題視したのは「アーデンがソムヌスを玉座に座らせた」と言う事。
ここまでして運ぼうとした玉座・・・それはソルハイムの歴史と魂であって、王以外が座するなど言語道断。許される事では無く、担ぎ上げられたソムヌス自身が一番困惑していた。
が、当のアーデンはと言えば、ひりつく空気をものともせず。いつもの穏やかな笑みを浮かべてこう告げた。
「玉座は王が座るから玉座であって、本質は椅子だ。
だから椅子を必要とする者が座ればよい。
それに玉座だって、椅子本来の役割が果たせて本望だろう。」
ソルハイムの歴史だ魂だと言われているけど、玉座は椅子なんだから、必要なら椅子として使ってやればよい・・・きっと玉座だって、その方が椅子としての役割を果たせて幸せだろうと。
勿論、ソルハイムの歴史や魂は大切だけど、それだけに囚われてはいけない・・・物事の本質を見極める目が無ければ、歴史や魂なんてファンタジーだけで民は守れない。
「見知らぬ土地では、神託を乞う必要もあるだろう。
その時『剣神バハムート』の存在は欠かせない。
玉座の事なら、ソムヌスの代わりに私が担ぐから。
どうか私の弟も同行させてやって欲しい。」
ソルハイムの王は『炎神イフリート』の現人神より続く尊い血統であるなど・・・誰よりも歴史や魂なんてファンタジーを一身に纏う存在でありながら。
民を導く王としてのアーデンの視点は、何時だって物事の本質・・・幾重にも重なる「幻想」の中核にある「真実」を見据えていた。
アーデンは何時だって「真実」を見失う事は無く、
故に誰よりも「真実」を知っていた。
穏便に断ってくれると思っていた王にそう頼まれては、臣下である彼らに反対する事など出来ない・・・王が代わりに担ぐという事に関しては、何とか撤回してもらいたい所だけれど。きっとそれも「私が言い出した事だから」と、人の好い王は聞かないだろう。
そんな遣り取りの末の、想定外のソムヌスの同行。勿論それは他の「王剣の一族」の者達にとっては不安要素ではあったけれど・・・それでもどこかに確かにアーデンとエイラ、そしてソムヌスが一緒に居られる事に安堵していた。
それはきっと古来より受け継がれてきた、ソルハイムの民としての信仰。一族が何だかんだ言ったところで、神の魂で繋がる三人を引き離す事には抵抗もあるし畏れもある。だから、
「王がそう仰るのであれば、我らはそれに従いましょう。
だからソムヌス、お前は其方に座っていなさい。」
「で、でも!
僕が乗ってればその分、重たくなるし・・・歩いて」
「重い玉座を担ぎながら、
お前の狭い歩幅に合わせて歩く方が大変なんだ。
分かったら大人しく座ってろ。」
「皆がそう言うのだから、お言葉に甘えなさい。
ねぇ、アーデン?」
「あぁ、エイラの言う通り。
甘えられるうちに、甘えておけばいい。
子供が子供でいられるのは幸せな事だ。」
大人が子供に無理を強いなければならない・・・大人同様に子供を扱わなければならない世界ほど、王として辛く悲しく申し訳ない世界は無いのだから。
子供には子供らしく、笑っていて欲しいと思う・・・笑える世界であって欲しいと願う。
「全てのソルハイムの民が、心穏やかでありますように。」と。
その使命を果す為に、アーデンとエイラ。
そしてソムヌスを含む「王剣の一族」12人は、ソルハイムの三種の神器「光り輝く指輪」「水晶の首飾り」「王の玉座」を携え、
「アーデン様!
新しい国が出来たら、絶対に迎えに来てね!」
「あぁ、必ず私が迎えに来る。
だからそれまで、待っていておくれ。」
多くの民らに惜しまれつつも、イオスの世界を巡る旅へと旅立った。
新しい土地に新しい国を興す前提で動いてた・・・もうこの土地は長く持たないって、分かっていたんだ。
だから本当なら、悠長に旅してる時間なんて無かった。
でも世界には色々な問題が起こっていて、助けを求める人たちがいて・・・それを見捨てる事なんて出来なかったから。
結果として、彼らを長く待たせる事になってしまった。
あの時「必ず私が迎えに来る」って約束した子も、ずっと待っててくれたのに。
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