落書き帳の10ページ目
◆無断転載 禁止(ご確認下さい)◆ https://xxaoixx.blog.shinobi.jp/Entry/73/
FF15:レガリア(TYPE-F)で1000年の時を超える話《新約 40》
- 2025/07/13 (Sun) |
- ゲーム語り |
- Edit |
- ▲Top
■□■□■□■□■□■□■□■□
《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (炎神の祭壇~炎神の裁き)】
《今回の御品書き (FF15・二次創作モドキです) 》
【『ルシスの禁忌』とは (炎神の祭壇~炎神の裁き)】
■□■□■□■□■□■□■□■□
【『ルシスの禁忌』とは (炎神の祭壇~炎神の裁き)】
剣神の一族の巫が授かった『炎神イフリート』からの『早く逃げろ!』と言う神託と、対の娘『氷神シヴァ』の「私が皆を導きます」という言葉に従い。ソルハイム王国の民らは住み慣れた先祖代々の土地を捨て、炎神イフリートの力の及ばぬ土地・・・ラバティオ火山から遠く離れたウェルエタム地方へと逃れて行った。
それがもう、数十年も前の話。
ラバティオ火山を観察していた当時の巫は、今までとは違う場所からの噴煙を見て「炎神様がお怒りなのに違いない」と考え、その日の夜「火を噴くラバティオ火山を背に、炎神イフリートが「早く逃げろ!」と叫ぶ夢」を見た・・・これが「炎神イフリートの神託」の真相。
つまり巫は、本当に霊的な力で以て炎神イフリートから『早く逃げろ!』という言葉を授かった訳ではなく。火山を観察し噴火の兆候を捕らえ、それが神や神話と結び付き、それらの結果として「炎神イフリートの神託」とされただけなので。
火山の活動期間が、人間の一生とは比べ物にならない程に長く永いのは当然で。
噴火の兆候を捕らえたからと言って、直ぐに噴火を起こす訳では無かった。
だからラバティオ火山が噴火する事も無く、既に「炎神イフリートの神託」から数十年もの年月が経っていた。
しかしだからと言って、ソルハイムの民らは「炎神イフリートの神託」を嘘だとは思わなかった・・・少なくとも彼らは遠く離れた地にあっても、炎神イフリートを信じ続けていた。
炎神イフリートの力の及ばぬ土地と言う事は、ラバティオ火山という熱源から遠い土地・・・と言う事でもあって。彼らが定住の地としたウェルエタム地方は、大陸の中でも特に寒さの厳しい地域・・・確かに彼らの国があったスカープ地方や、人類誕生の地であるピストアラ地方よりも、寒さ厳しい土地ではあった。
でもその寒さは、彼らが神話の一部として聞かされていた「死の女神が住まう雪氷の地」「人間の命を奪う寒さ」程では無かった。古来より彼らの生活・文明レベルが上がっている事もあり、人間を拒絶する白銀の世界・・・と思われていた大地は、人が生きて行くに不向きな土地ではあっても、決して生きて行けない土地では無かった。人間達を受け入れてくれた。
その事をソルハイムの子供らは、
「死の女神・・・氷神様も、炎神様と一緒に居る間に、
きっと人間が好きになってくれたんだよ!
だから、人間に優しくしてくれるんだ!」
「炎神様の代わりに頑張ってくれてるんだもん。
氷神様と一緒に、僕も頑張るんだ!」
「炎神様と氷神様、はやく会わせてあげたいね!」
子供達の無邪気な言葉・・・それは大人達の心にも、暖かな灯火と憧憬と決意を宿した。
それらの想いを胸に。彼らは最低限の生活基盤が整うと、ある大事業を計画し実行に移し完成まで漕ぎ着けた。
それは長い長い時間と、莫大な資材と、多大な労力を費やし「炎神様に会いたい」と、ただただそれだけの為に建てられた宮殿・・・と言う程、豪華な物では無かったけど。何せ当時の人々にはそれだけの資材も建築技術も無かったし、何よりも建物を建てるには不向きな場所だったから。
でも、そんな事は関係無くて・・・彼らが何よりも大事にした事は、
「ここからなら、炎神様が・・・ラバティオ火山が見える。」
彼らが定住の地としたウェルエタム地方からは距離がある上に、そこは山岳地帯で足場も悪く、容易に辿り着ける場所では無かったけど。
そこからなら遠く見渡す東の海の向こうに、ラバティオ火山を望む事が出来たから・・・炎神イフリートの存在を感じる事が出来たから。高い山々が並び聳える山岳地帯・ウルワート地方に、ラバティオ火山を望む・・・炎神イフリートに会う為の施設を造り上げた。
「そこに行けば、炎神様に会える。」
遠く離れていても、彼らは炎神イフリートへの信仰を忘れる事は無かったから。
あんな場所に建物造ろうなんて、神サマの為に凄いよね。
集落からは遠いし、崖ばっかりだし、足場は悪いし・・・そこまで行くのも一苦労なのに。木材は兎に角、他の資材とか道具、そこで作業する為の生活用品なんか全部、地上から運び上げなきゃならなかったんだよ?
レイヴス君ならその苦労、ちょっと分かるんじゃない?
帝都グラレアから、フェネスタラ宮殿まで・・・今なら飛空艇でひとっ飛びだけどね。
■□■□■□■□■□■□■□■□
スカープ地方からウェルエタム地方へと移住し、寒さ厳しい未開の地での国を再興に務め。
一息吐く間もなく自分達の生活も最低限に、彼らは長い時間を掛けて「炎神の祭壇」を完成させた。
でもその頃には、移住して来た民からは数世代が経っていて。
彼ら自身が其処を訪れる事は叶わなかった・・・懐かしい故郷の風景「もう一度、炎神様の山を見たかった」その願いが叶う事は無かったけど。
こうして造られた「炎神の祭壇」は、世代を経ても長くソルハイムの民らの心の支えとなった。
とは言え、場所が場所だけに簡単に行ける場所では無かったので。日常的な参拝と言うよりも、神に会う為に日常生活・空間を離れ、自然厳しい道を行く・・・それは巡礼の様な意味合いが強かった。
なので切り立った崖からなる山岳地帯の要所要所には、参拝者を迎え入れる為の休憩施設・・・として、建築時に仮住まいとしていた建物が残されており。
それらの建物には、古来より神職に携わって来た・・・つまり「神の声を聞く為には、より神の近くに在るべき」との使命を受けた「剣神の一族」の者達が住み込み。自らの使命と共に、彼らの安全を祈る事も我らの務めだとして、遠路遥々やって来た参拝者達の世話に当たっていた。
その様に遠く不自由な土地だったので。王は神でもあったけれど、その王も「炎神の祭壇」に居を構えている訳ではなかった。
王ですら・・・否、王は民の傍に居なければならないからこそ、王が国を離れ「炎神の祭壇」に赴くのは数年に一度の神事の時だけで。
それは王の対である『氷神シヴァ』の娘や、「剣神の一族」から選ばれた『剣神バハムート』の子にも言える事だった。だって彼ら彼女らは「神の一族の三兄姉弟」で、王の傍に居るのが当然とされたから。
王が国に在る時は、彼ら彼女らも共に国に在り。
王が「炎神の祭壇」に赴く時は、彼ら彼女らも共に「炎神の祭壇」に赴いた。
女性である『氷神シヴァ』や、幼子であった『剣神バハムート』には厳しい巡礼の旅路だったけど。
ソルハイムの民の為と思えば・・・民から託されたのだと思えば、どんな困難な道のりでも乗り越えられた。
目の前に広がるのは、まるで揺らめく炎の様に揺れる・・・美しくも何処か怖ろしさを連想させる紅い花。
それを『氷神シヴァ』が丁寧に詰み、心を込めて花冠に仕上げ。
そして『炎神イフリート』が祈りを込め、祝詞と共に祭壇に捧げ。
最後に『剣神バハムート』が両刃の神剣を手に、神に捧げる剣舞を舞う。
我らが民の為。
どうか我らの想いを受け取り給い、我らに炎神の加護を慈悲を授け給え・・・と。
レイヴス君はヒガンバナって知ってる?
真っ赤な花を咲かせるんだけど、花と葉の時期がズレるから、本当に辺り一面真っ赤に染まるんだ。
そのせいかな?家に持ち帰ったら火事になる・・・なんてね。
それに球根に毒があったりで、不吉な別名もあったりするんだけど。
赤色って、血が通ってる・・・って感じがして好きなんだ。
■□■□■□■□■□■□■□■□
人間達の時間としては、相当に長い時間を。
火山活動としては、それなりの時間を。
神の時間としては・・・測る事の出来ない時間を経て。
あの日の「炎神イフリートの神託」から数百年。
ラバティオ火山が、遂に大噴火を起こした。
人間達の記録に残っているラバティオ火山の噴火は、今を遡る事千年以上前・・・あの「原初の火」を授かった小規模噴火が最初で最後だったので、人間達はラバティオ火山の事を「穏やかな火山」だと思っていた。
が、今回の大噴火は、前回のそれとは比べ物にならなかった。
あの時の噴火では、奇跡の様な偶然で対岸のスカープ地方まで「原初の火」が届いたに過ぎず。
彼らが火山の影響と思わなかっただけで、実際には多少の影響があったのかもしれないけれど。あくまでも対岸の火事・・・彼らが噴火による影響を感じる事は無かった。
でも今回の大噴火は・・・、
「これが、炎神様の裁き・・・。」
ラバティオ火山を望む炎神の祭壇より、その噴火の様を・・・その被害を目の当たりにした剣神の巫は、眼下に広がるあまりの光景に膝から崩れ落ちた。
ウルワート地方の「炎神の祭壇」から、ウェルエタム地方のソルハイム王国王都へ。数日の間を掛け届けられた巫からの報告には、こう書かれていた。
もし我々の祖先が「炎神イフリートの神託」を蔑ろにし、
スカープ地方に留まり続けて居たら。
ソルハイム王国は滅亡していたでしょう。
彼らの祖先がスカープ地方を離れ、早数百年。
それだけの年月が過ぎれば国の痕跡は風化し、土地も自然に還っていた。
もう何も、残っていなかった。
何も残っていないと、思っていた。
でも・・・自分達の国の始まりである土地に、火に焼けた溶岩が降り注ぐ様を。引火した炎に飲まれ、焼き尽くされ行く現実を容赦無く突き付けられ。
何も覚えていない筈なのに・・・涙が、嗚咽が止まらなかった。
ラバティオ火山の噴火に誘発された海底火山が噴火し、海は荒れ狂い。
噴火による火砕流に大地は飲まれ、ひび割れ、陥没崩落し。
火山口から噴き出す噴煙により大気は乱れ、幾重もの激しい稲光が空を走った。
それはまるで神々が・・・水神も、巨神も、雷神もが怒り狂っている様で。
ちっぽけな人間に対抗する術などある筈も無く、彼らはひたすら「神々の怒りが、鎮まります様に」と祈り続けるしかなかった。
後世『創世記』で魔大戦と語り継がれる物語の真相・・・それは火山の噴火に伴う自然災害だった。
その自然災害に対し、炎神イフリートを主神としていたソルハイムの民らは「私利私欲に走り人間同士で争い、剣を人殺しの道具とした人間達に対する炎神イフリートの粛清は、彼らが受けるべき当然の報い」と解釈した。
「彼らは、それ程の罪を犯したのだから。
その罰を受けるのは、当然の報いである。」と。
そして彼らは六神を「仲の良い兄弟姉妹神」と考えていたから。炎神イフリートの粛清に同調する様に起こった自然災害も「水神も、巨神も、雷神も、炎神と共に怒っている」と、当たり前に捉えた。
しかし他の地域の人間達は『炎神イフリート』にそこまで肩入れしていなかった・・・寧ろ自分達の不実に心当たりがあったからこそ、
「神への信仰を忘れ、驕り高ぶった人間達を、
炎神イフリートが滅ぼそうとし。
それを他の神々が阻止しようと、戦ってくれたのだ。」
そう考える程には、自分達の不実に心当たりはあった。
でも「そこまでする事は無かった筈だ」と考える彼らにすれば、同時に起こった自然災害は・・・他の六神達は「行き過ぎた炎神の暴挙から、自分達を守る為に戦ってくれたのだ」となり。
他の六神を味方に付ける事で、殊更彼だけを・・・彼が「悪」だったと、炎神イフリートを自分達人間に仇為す悪神へと仕立て上げた。
勿論、それは「想い出・記憶」の結果であって、人間達が意図してそうした結果では無いのだけど。
イオスの人々の「想い出・記憶」が、次の世界の「設計図」となるイオスの世界においては、彼らの「想い出・記憶」の結果が全てだった・・・それは六神と呼ばれる神様ですら逃れられない世界の理。
可哀想な話だよね・・・彼を信じる人間達にすら、愚かな人間達に対する炎神イフリートの粛清って解釈され。
今では、炎神イフリートがその恐ろしい炎の力を振るい、無慈悲にも人間達を滅ぼそうとした・・・って解釈されてるんだから。
まぁ、可哀想なのは「勝手に悪者にされた」事じゃなくて。神サマも人間達の「想い出・記憶」の影響を受ける・・・その結果でしかなくて。そう言う風に人間達の「想い出・記憶」で、こんな簡単に変えられちゃうって事の方。
例えばの話。炎神イフリートはラバティオ火山を背に立ちはだかり、襲い来る溶岩流から逃げ惑う人間達を守ろうとしたんだ・・・って言ったら、君は信じる?
君がそう信じて、その「想い出・記憶」を持ってくれてれば・・・何時か何処かのイオスの世界では、そういう『炎神イフリート』が生まれるかもしれない。そう言う事。
【『ルシスの禁忌』とは (炎神の祭壇~炎神の裁き)】
剣神の一族の巫が授かった『炎神イフリート』からの『早く逃げろ!』と言う神託と、対の娘『氷神シヴァ』の「私が皆を導きます」という言葉に従い。ソルハイム王国の民らは住み慣れた先祖代々の土地を捨て、炎神イフリートの力の及ばぬ土地・・・ラバティオ火山から遠く離れたウェルエタム地方へと逃れて行った。
それがもう、数十年も前の話。
ラバティオ火山を観察していた当時の巫は、今までとは違う場所からの噴煙を見て「炎神様がお怒りなのに違いない」と考え、その日の夜「火を噴くラバティオ火山を背に、炎神イフリートが「早く逃げろ!」と叫ぶ夢」を見た・・・これが「炎神イフリートの神託」の真相。
つまり巫は、本当に霊的な力で以て炎神イフリートから『早く逃げろ!』という言葉を授かった訳ではなく。火山を観察し噴火の兆候を捕らえ、それが神や神話と結び付き、それらの結果として「炎神イフリートの神託」とされただけなので。
火山の活動期間が、人間の一生とは比べ物にならない程に長く永いのは当然で。
噴火の兆候を捕らえたからと言って、直ぐに噴火を起こす訳では無かった。
だからラバティオ火山が噴火する事も無く、既に「炎神イフリートの神託」から数十年もの年月が経っていた。
しかしだからと言って、ソルハイムの民らは「炎神イフリートの神託」を嘘だとは思わなかった・・・少なくとも彼らは遠く離れた地にあっても、炎神イフリートを信じ続けていた。
炎神イフリートの力の及ばぬ土地と言う事は、ラバティオ火山という熱源から遠い土地・・・と言う事でもあって。彼らが定住の地としたウェルエタム地方は、大陸の中でも特に寒さの厳しい地域・・・確かに彼らの国があったスカープ地方や、人類誕生の地であるピストアラ地方よりも、寒さ厳しい土地ではあった。
でもその寒さは、彼らが神話の一部として聞かされていた「死の女神が住まう雪氷の地」「人間の命を奪う寒さ」程では無かった。古来より彼らの生活・文明レベルが上がっている事もあり、人間を拒絶する白銀の世界・・・と思われていた大地は、人が生きて行くに不向きな土地ではあっても、決して生きて行けない土地では無かった。人間達を受け入れてくれた。
その事をソルハイムの子供らは、
「死の女神・・・氷神様も、炎神様と一緒に居る間に、
きっと人間が好きになってくれたんだよ!
だから、人間に優しくしてくれるんだ!」
「炎神様の代わりに頑張ってくれてるんだもん。
氷神様と一緒に、僕も頑張るんだ!」
「炎神様と氷神様、はやく会わせてあげたいね!」
子供達の無邪気な言葉・・・それは大人達の心にも、暖かな灯火と憧憬と決意を宿した。
それらの想いを胸に。彼らは最低限の生活基盤が整うと、ある大事業を計画し実行に移し完成まで漕ぎ着けた。
それは長い長い時間と、莫大な資材と、多大な労力を費やし「炎神様に会いたい」と、ただただそれだけの為に建てられた宮殿・・・と言う程、豪華な物では無かったけど。何せ当時の人々にはそれだけの資材も建築技術も無かったし、何よりも建物を建てるには不向きな場所だったから。
でも、そんな事は関係無くて・・・彼らが何よりも大事にした事は、
「ここからなら、炎神様が・・・ラバティオ火山が見える。」
彼らが定住の地としたウェルエタム地方からは距離がある上に、そこは山岳地帯で足場も悪く、容易に辿り着ける場所では無かったけど。
そこからなら遠く見渡す東の海の向こうに、ラバティオ火山を望む事が出来たから・・・炎神イフリートの存在を感じる事が出来たから。高い山々が並び聳える山岳地帯・ウルワート地方に、ラバティオ火山を望む・・・炎神イフリートに会う為の施設を造り上げた。
「そこに行けば、炎神様に会える。」
遠く離れていても、彼らは炎神イフリートへの信仰を忘れる事は無かったから。
あんな場所に建物造ろうなんて、神サマの為に凄いよね。
集落からは遠いし、崖ばっかりだし、足場は悪いし・・・そこまで行くのも一苦労なのに。木材は兎に角、他の資材とか道具、そこで作業する為の生活用品なんか全部、地上から運び上げなきゃならなかったんだよ?
レイヴス君ならその苦労、ちょっと分かるんじゃない?
帝都グラレアから、フェネスタラ宮殿まで・・・今なら飛空艇でひとっ飛びだけどね。
■□■□■□■□■□■□■□■□
スカープ地方からウェルエタム地方へと移住し、寒さ厳しい未開の地での国を再興に務め。
一息吐く間もなく自分達の生活も最低限に、彼らは長い時間を掛けて「炎神の祭壇」を完成させた。
でもその頃には、移住して来た民からは数世代が経っていて。
彼ら自身が其処を訪れる事は叶わなかった・・・懐かしい故郷の風景「もう一度、炎神様の山を見たかった」その願いが叶う事は無かったけど。
こうして造られた「炎神の祭壇」は、世代を経ても長くソルハイムの民らの心の支えとなった。
とは言え、場所が場所だけに簡単に行ける場所では無かったので。日常的な参拝と言うよりも、神に会う為に日常生活・空間を離れ、自然厳しい道を行く・・・それは巡礼の様な意味合いが強かった。
なので切り立った崖からなる山岳地帯の要所要所には、参拝者を迎え入れる為の休憩施設・・・として、建築時に仮住まいとしていた建物が残されており。
それらの建物には、古来より神職に携わって来た・・・つまり「神の声を聞く為には、より神の近くに在るべき」との使命を受けた「剣神の一族」の者達が住み込み。自らの使命と共に、彼らの安全を祈る事も我らの務めだとして、遠路遥々やって来た参拝者達の世話に当たっていた。
その様に遠く不自由な土地だったので。王は神でもあったけれど、その王も「炎神の祭壇」に居を構えている訳ではなかった。
王ですら・・・否、王は民の傍に居なければならないからこそ、王が国を離れ「炎神の祭壇」に赴くのは数年に一度の神事の時だけで。
それは王の対である『氷神シヴァ』の娘や、「剣神の一族」から選ばれた『剣神バハムート』の子にも言える事だった。だって彼ら彼女らは「神の一族の三兄姉弟」で、王の傍に居るのが当然とされたから。
王が国に在る時は、彼ら彼女らも共に国に在り。
王が「炎神の祭壇」に赴く時は、彼ら彼女らも共に「炎神の祭壇」に赴いた。
女性である『氷神シヴァ』や、幼子であった『剣神バハムート』には厳しい巡礼の旅路だったけど。
ソルハイムの民の為と思えば・・・民から託されたのだと思えば、どんな困難な道のりでも乗り越えられた。
目の前に広がるのは、まるで揺らめく炎の様に揺れる・・・美しくも何処か怖ろしさを連想させる紅い花。
それを『氷神シヴァ』が丁寧に詰み、心を込めて花冠に仕上げ。
そして『炎神イフリート』が祈りを込め、祝詞と共に祭壇に捧げ。
最後に『剣神バハムート』が両刃の神剣を手に、神に捧げる剣舞を舞う。
我らが民の為。
どうか我らの想いを受け取り給い、我らに炎神の加護を慈悲を授け給え・・・と。
レイヴス君はヒガンバナって知ってる?
真っ赤な花を咲かせるんだけど、花と葉の時期がズレるから、本当に辺り一面真っ赤に染まるんだ。
そのせいかな?家に持ち帰ったら火事になる・・・なんてね。
それに球根に毒があったりで、不吉な別名もあったりするんだけど。
赤色って、血が通ってる・・・って感じがして好きなんだ。
■□■□■□■□■□■□■□■□
人間達の時間としては、相当に長い時間を。
火山活動としては、それなりの時間を。
神の時間としては・・・測る事の出来ない時間を経て。
あの日の「炎神イフリートの神託」から数百年。
ラバティオ火山が、遂に大噴火を起こした。
人間達の記録に残っているラバティオ火山の噴火は、今を遡る事千年以上前・・・あの「原初の火」を授かった小規模噴火が最初で最後だったので、人間達はラバティオ火山の事を「穏やかな火山」だと思っていた。
が、今回の大噴火は、前回のそれとは比べ物にならなかった。
あの時の噴火では、奇跡の様な偶然で対岸のスカープ地方まで「原初の火」が届いたに過ぎず。
彼らが火山の影響と思わなかっただけで、実際には多少の影響があったのかもしれないけれど。あくまでも対岸の火事・・・彼らが噴火による影響を感じる事は無かった。
でも今回の大噴火は・・・、
「これが、炎神様の裁き・・・。」
ラバティオ火山を望む炎神の祭壇より、その噴火の様を・・・その被害を目の当たりにした剣神の巫は、眼下に広がるあまりの光景に膝から崩れ落ちた。
ウルワート地方の「炎神の祭壇」から、ウェルエタム地方のソルハイム王国王都へ。数日の間を掛け届けられた巫からの報告には、こう書かれていた。
もし我々の祖先が「炎神イフリートの神託」を蔑ろにし、
スカープ地方に留まり続けて居たら。
ソルハイム王国は滅亡していたでしょう。
彼らの祖先がスカープ地方を離れ、早数百年。
それだけの年月が過ぎれば国の痕跡は風化し、土地も自然に還っていた。
もう何も、残っていなかった。
何も残っていないと、思っていた。
でも・・・自分達の国の始まりである土地に、火に焼けた溶岩が降り注ぐ様を。引火した炎に飲まれ、焼き尽くされ行く現実を容赦無く突き付けられ。
何も覚えていない筈なのに・・・涙が、嗚咽が止まらなかった。
ラバティオ火山の噴火に誘発された海底火山が噴火し、海は荒れ狂い。
噴火による火砕流に大地は飲まれ、ひび割れ、陥没崩落し。
火山口から噴き出す噴煙により大気は乱れ、幾重もの激しい稲光が空を走った。
それはまるで神々が・・・水神も、巨神も、雷神もが怒り狂っている様で。
ちっぽけな人間に対抗する術などある筈も無く、彼らはひたすら「神々の怒りが、鎮まります様に」と祈り続けるしかなかった。
後世『創世記』で魔大戦と語り継がれる物語の真相・・・それは火山の噴火に伴う自然災害だった。
その自然災害に対し、炎神イフリートを主神としていたソルハイムの民らは「私利私欲に走り人間同士で争い、剣を人殺しの道具とした人間達に対する炎神イフリートの粛清は、彼らが受けるべき当然の報い」と解釈した。
「彼らは、それ程の罪を犯したのだから。
その罰を受けるのは、当然の報いである。」と。
そして彼らは六神を「仲の良い兄弟姉妹神」と考えていたから。炎神イフリートの粛清に同調する様に起こった自然災害も「水神も、巨神も、雷神も、炎神と共に怒っている」と、当たり前に捉えた。
しかし他の地域の人間達は『炎神イフリート』にそこまで肩入れしていなかった・・・寧ろ自分達の不実に心当たりがあったからこそ、
「神への信仰を忘れ、驕り高ぶった人間達を、
炎神イフリートが滅ぼそうとし。
それを他の神々が阻止しようと、戦ってくれたのだ。」
そう考える程には、自分達の不実に心当たりはあった。
でも「そこまでする事は無かった筈だ」と考える彼らにすれば、同時に起こった自然災害は・・・他の六神達は「行き過ぎた炎神の暴挙から、自分達を守る為に戦ってくれたのだ」となり。
他の六神を味方に付ける事で、殊更彼だけを・・・彼が「悪」だったと、炎神イフリートを自分達人間に仇為す悪神へと仕立て上げた。
勿論、それは「想い出・記憶」の結果であって、人間達が意図してそうした結果では無いのだけど。
イオスの人々の「想い出・記憶」が、次の世界の「設計図」となるイオスの世界においては、彼らの「想い出・記憶」の結果が全てだった・・・それは六神と呼ばれる神様ですら逃れられない世界の理。
可哀想な話だよね・・・彼を信じる人間達にすら、愚かな人間達に対する炎神イフリートの粛清って解釈され。
今では、炎神イフリートがその恐ろしい炎の力を振るい、無慈悲にも人間達を滅ぼそうとした・・・って解釈されてるんだから。
まぁ、可哀想なのは「勝手に悪者にされた」事じゃなくて。神サマも人間達の「想い出・記憶」の影響を受ける・・・その結果でしかなくて。そう言う風に人間達の「想い出・記憶」で、こんな簡単に変えられちゃうって事の方。
例えばの話。炎神イフリートはラバティオ火山を背に立ちはだかり、襲い来る溶岩流から逃げ惑う人間達を守ろうとしたんだ・・・って言ったら、君は信じる?
君がそう信じて、その「想い出・記憶」を持ってくれてれば・・・何時か何処かのイオスの世界では、そういう『炎神イフリート』が生まれるかもしれない。そう言う事。
PR